「商標登録をしようと出願したところ、他者によって既にまったく同じまたは似ている文字やロゴが登録されていた」というケースがあります。

この場合、後から出願された商標の登録は認められないのでしょうか?
実は、認められる可能性は十分にあります。

「他人の登録商標と同一または似ている文字やロゴの登録は認められないんじゃないの!?」と疑問に思われるかもしれません。
確かにそれは完全に誤りというわけではありません。
しかし、それだけでは登録が認められない理由にはならないのです。

それならば、冒頭の様なケースでは他にどの様な点を気にする必要があるのでしょうか。

それは、「その商標の使用目的」つまり「どんな商品/サービスについてその商標を使用するのか」という点です。

商標法において、「商標を使用する商品・サービス」のことを「指定商品・指定役務」と呼びます。
今回は、この「指定商品・指定役務」について解説します。

実際に商標登録出願を行う際には、必ず関わってくるポイントにもなりますので、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。

指定商品・指定役務

上記でも少し触れましたが、「指定商品・指定役務」とは、「その商標をどんな商品/サービス(以下、役務と言います)に使用するか」を指します。

商標登録出願の際には、登録したい商標と共に、「指定商品・指定役務」を願書に記載し、特許庁へ提出する必要があります。

つまり、商標権(専用権の範囲)とは 「この登録した商標を、指定した商品/役務の範囲で独占的に使用する権利」なのです。

なお、商標権は、登録した商標と指定商品・指定役務が同一の他人の商標のみではなく、原則、登録した商標と同一又は類似の関係にあって、指定商品・指定役務が同一又は類似の範囲にある他人の商標にも権利が及びます(禁止権の範囲)。

ですので、冒頭のケースの様に、例えば、「ABCパワー」という商標を、「食器用洗剤」(指定商品・指定役務)について登録したいと考えているときに、「ABCパワー」という他者の登録商標が見つかってしまったとしても、その登録商標の指定商品・指定役務が「マッサージ機」など登録を考えている「食器用洗剤」とまったく異なる商品・役務であった場合、登録が認められる可能性はあるということになります。

類似群コード

類似群コード」とは、それぞれの商品や役務に割り振られた、数字とアルファベットの組み合わせでできている5桁のコードです。

願書に「指定商品・指定役務」を記載する際には、特許庁による審査段階でこの類似群コード が付与され、基本的には、これを基にして商標の類似審査がなされます。

特許庁での審査では、同じ類似群コードが付けられた商品や役務については、お互いに類似するものと推定されます。

こうして審査する側もされる側も、共通の基準によって審査が行われることで公平性が担保されているのです。

類似群コードは、特許庁のHP内、商品及び役務の分類表「類似商品・役務審査基準」 で確認することができます。

類似群コードの利用

類似群コードは、商標登録出願をする前に、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で、他者によって既に 出願されている商標や、他者の登録商標を検索する場合にも利用できます。

具体的には、他人の登録商標の権利範囲を調査して、自分が出願しようとしている商標の登録可能性を判断することや、出願しようとしている商標が他人の登録商標と権利接触の可能性がないかを判断する目的で利用されます。

「J-PlatPat」内の「商品・役務名検索」サービスを使うと、出願人が商品・役務名に関連する語を用いて、どのような指定商品・指定役務の表現が特許庁で採択されているかということや、 類似群コードの情報も含めて検索することが可能となっています。

まとめ

商標登録をする前に、商標それ自体と似たような文字やロゴがあるかどうか、あった場合には、「指定商品・指定役務」についてはどうか、調べてみると良いでしょう。

少しでもわからないことがある場合には、弁理士や特許事務所のプロにお願いすることをお勧めします。