特許権や商標権などは日本国内で権利化しても海外にまで効力を及ぼすことはありません。

では、著作権も同様に海外でも効力を発揮しないのでしょうか?

詳細をご説明致します。

 

著作権に国境はない

特許権や商標権などは、日本国内において権利化を実現したとしても、それだけでは海外にまで効力を及ぼすことはありません。

海外で権利保護を目指す場合は、該当する各国における出願・登録が必要となります。

ところが、日本国内で権利化されていれば海外においても効力を発揮する知的財産があります。

それが『著作権』です。

日本国内で保護されている著作物は、海外においてもその権利が保護されます。

知的財産の業界では「著作権に国境はない」と言われていますが、まさに著作権は国境を超えて権利を発揮します。

海外における著作権の効力は、著作権を世界的に保護する『ベルヌ条約』と『万国著作権条約』が主体となって働いています。

ベルヌ条約は世界168カ国、万国著作権条約は世界100カ国が加盟しており、当然ながら日本も各条約に加盟している国の一つです。

もちろん各条約への加盟を果たしていない海外諸国においては、日本の著作物の権利は保護されません。

例えば、エチオピアやイランなどは各条約に加盟していないため、日本国内で保護されている著作物の権利は保護を受けることができないのです。

ただし、各条約の非加盟国であってもTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に加盟している場合があり、協定関係にある国では著作権が保護される場合もあります。

 

条約によって保護期間に差がある?

日本の著作権法では、著作権の保護期間を「著作者の死後50年間」と定めています。

ベルヌ条約における最低限の保護期間は日本の著作権法と同じく死後50年間万国著作権条約における最低限の保護期間は日本の著作権法よりも短い死後25年間と規定されておりますが、国によって長い保護期間を与えることもできるとされております。

そのため、加盟国の間で、著作権の保護期間が異なることがあります。

条約上は、原則、自国の国民に与える保護と同等の保護を他の加盟国の国民にも与えなければならないとされておりますので、原則どおりに解釈すると、日本においては他の加盟国の著作物に対しては、死後50年の保護を与えなければなりません。

また、国内の法律で、死後70年の保護を与えている国では、他の加盟国の国民にも同じく死後70年の保護を与えなければなりません。

 

しかしながら、著作権の保護期間に関しては、例外的に、他の加盟国が、自国より短い著作権の保護期間としている場合には、当該他の加盟国に対し、当該加盟国の保護期間を採用することができます。

 

国によって著作物性の判断が異なる

国内において生まれた著作物でも、条約の存在によって他国でも著作権が認められますが、等しく権利が保護されるというわけではありません。

国によって著作物性の判断は異なります。

たとえば、国内を含め多くの国ではベルヌ条約に基づき著作物が創作された時点をもって著作権が発生する「無方式主義」が採用されていますが、1989年までのアメリカでは自国の著作権法に基づき著作権を示す『©』=copyright markを表示していないと著作権が認められない決まりになっていました。

現在ではほとんどの国で©の表示は不要となっていますが、先ほど説明したとおり中東の一部などベルヌ条約に加盟していない国では原則的に万国著作権条約に則り©の表示が必要となります。

国によって著作物性は異なるので、海外で著作権を行使したいと考えるのであれば、対象となる国の著作権事情をしっかりと下調べしておくべきでしょう。

 

海外に向けて著作物を発表したい場合は?

平成22年に文化庁が実施したアンケート調査の結果によると、書籍・雑誌・CD・DVDなどの海賊版被害は中国における被害が最大となっており、国内での被害を除けば台湾・韓国などアジア圏に集中しています。

また、販売形態としては、インターネットサイト・オークション・露天での販売が多くを占めており、著作権を侵害する業者だけでなく広く一般人の著作権保護に対する意識が欠落していることが浮き彫りになりました。

 

また、最近ではデジタルコンテンツとしての著作権侵害の被害も多く、とくに動画投稿サイトであるYou Tubeにおける被害が顕著です。

今後、海外に向けて著作物を発表していくことを予定しているのであれば、このような状況を踏まえた対策を考えておく必要があるでしょう。

 

海外向けの著作物について保護対策を講じたいと考えているのであれば、信頼できる弁理士が所属する特許事務所への相談をおすすめします。

海外における著作権の効果に精通し、各国における取扱いにも詳しい弁理士からアドバイスを得られれば、海外での著作権侵害対策が万全になるでしょう。

 

また、最近とくに増加しているインターネットサイト・オークション・動画サイトでの著作権侵害に対しても、弁理士のサポートがあれば、侵害にあたる出品やコンテンツへの警告や強制措置がスムーズになります。

海外向けに著作物を公表したい、すでに公開している著作物について海外での侵害行為に悩まされているという方は、特許事務所への相談がトラブル解決への最善策となるでしょう。