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最終更新日:2024-6-5
※詳細な内容は、以下の記事をお読みください。
出願に必要な記載
商標の出願には、出願する商標のほかに、指定商品又は役務の記載と、それに準ずる区分を記載することが求められています。
今回は、この指定商品・役務と区分についてご説明します。
指定商品・役務とは?
商標登録出願の際には、登録したい商標と共に、「指定商品・役務」を願書に記載し、特許庁へ提出する必要があります。「指定商品・役務」とは、「その商標をどんな商品/サービス(以下、役務と言います)に使用するか」を指します。
ここで商標権とは、「この登録した商標を、指定した商品・役務の範囲で独占的に使用できる権利」のことです。
ですので、例えば、「ABCパワー」という商標を、「食器用洗剤」(指定商品・役務)について登録したいと考えているときに、「ABCパワー」という他者の登録商標が見つかってしまったとしても、その登録商標の指定商品・役務が「マッサージ機」であるなど、登録を考えている「食器用洗剤」とまったく異なる商品・役務であった場合、登録が認められる可能性はあるということになります。
登録が認められた場合には、出願時に指定した商品・役務の範囲内で権利が有効となります。
全く同じ商標(「ABCパワー」)でも違う商品(「食器用洗剤」と「マッサージ機」)の場合は、需要者(消費者)がそれらのブランドの出所を混同することはないため、併存して登録が認められます。
区分とは?
区分とは、特許庁が世の中にあるすべての商品・役務をおおまかに45個に分類したカテゴリーのことを指します。
区分は「第1類」~「第45類」の全45種類存在しており、特許庁によりあらかじめ定められています。
45区分の1つ1つは「類」と呼ばれており、分類わけは国際条約(ニース協定)で決められているもので、これに加盟している国ではある程度共通して取り扱われています。
なお、商標と区分が同一だからといって、絶対に登録が認められないわけではありません。
同じ区分でも、指定商品・役務が異なれば、類似しないものと取り扱われる場合があります。
先行商標との類否において重要なのは、区分の同一性ではなく、指定商品・役務の同一又は類似の部分となります。
ちなみに、45区分のうち、
「第1類」~「第34類」が『商品』が分類されている区分であり、
「第35類」~「第45類」が『役務(サービス)』が分類されている区分です。
区分の分類表がまとまった特許庁のページがありますので、是非ご確認ください。
※2024年度版です。
>>類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2024版対応〕
ちなみに、スタートアップ企業や中小企業のお客様が多い、弊所弁理士法人みなとみらい特許事務所での出願区分の上位ランキングは以下の通りです。
1位 第35類(広告業・経営コンサル業・小売業・卸売業)
2位 第41類(教育・文化・スポーツのサービス業(教育セミナー、映像提供のサービス))
3位 第9類(電子機器、コンピューターソフトウェア・携帯関連)
4位 第42類(開発研究のサービス・WEBサービス)
5位 第3類(化粧品関係)
「区分」と「指定商品・役務」のまとめ
「指定商品・役務」とは、「その商標を使用する商品・役務」のことであり、商標登録においては、出願時に指定した「指定商品・役務」について商標権が認められます。
そして「区分」とは、大まかに、「その商標を使う対象となる商品や役務が分類されたカテゴリー」を指します。
区分と指定商品・役務の特定の仕方
それでは、実際に商標登録をする際、「区分」及び「指定商品・役務」はどのように決めればよいのでしょうか。上記にてご説明しましたが、商標登録のための審査においては「商標」と「指定商品・役務」が大切です。ですので、登録したい商標が決まったらまずは「指定商品・役務」を考えていきましょう。
「指定商品・役務」を考える際には、その商標を「どの物品に使用するか」ではなく、その商標を使用して「どのように対価を得るか」という視点で考えることが大切です。
例えば、食品会社がロゴマークを商標登録する際には、「そのロゴマークを使ってどのように対価を得るか」を考えます。
食品会社であれば、通常、食品を販売して対価を得ると思われますので、商品パッケージや広告にそのロゴマークを使用する場合でも、「指定商品・役務」には、「乳製品」「パン」「清涼飲料」「果実飲料」など、販売する食品を選択していきます。
ここでロゴマークをパッケージや広告物に印字するからといって包装用容器(第16類・第20類)や広告業(第35類)を選択するのは誤りです。
このようにして「指定商品・役務」の選択ができたら、「区分」を考えていきます。
「乳製品」「パン」「清涼飲料」「果実飲料」はそれぞれ以下の区分に属します。
乳製品・・第29類
パン・・第30類
清涼飲料・・第32類
果実飲料・・第32類
上記4つの「指定商品・役務」にて出願する場合には、「区分」の数は第29類、第30類、第32類の3種類ですので、計3つの区分ということになります。
このように、まずは必要な「指定商品・役務」を優先的に洗いだし、そのあと、それぞれがどの「区分」に属するのかを考えれば良いということです。
区分の意味
出願の際に指定する「区分」の数により、特許庁へ支払う費用が変わります。
「区分」の数が増えれば、その分費用も増えます。
商標登録において特許庁へ支払う費用は、「出願料」と「登録料」ですが、それぞれの計算式は以下となっています。
出願料=3,400+(8,600×区分数)
登録料(5年分)=17,200×区分数
また、特許事務所へ依頼をした場合、ここでも「区分」の数により手数料が変動する事務所がほとんどかと思われます。
ですので、予算をオーバーしそうな場合には、指定したい区分に優先順位をつけ、選択されると良いかもしれません。
その他、区分を特定することによって、審査官は大まかに商品・役務のカテゴリーが認識できるため、審査官の審査効率が上がります。
このように、区分は、権利の本質とは関係のない部分で、意味を持つ項目といえます。
【ポイント】ここだけは押さえて!
- 「指定商品・役務」とは、「その商標を使用する商品・サービス」
- 「区分」とは、「その商標を使う対象となる商品やサービスのカテゴリー」
- 登録したい商標が決まったらまずは「指定商品・役務」を考え、「指定商品・役務」の選択ができたら、「区分」を考える
- 「区分」とは、料金の基準や審査効率の向上など、権利の本質とは関係のないところで意味をもつ
- 権利範囲に影響するのは、「指定商品・役務」の項目。つまり、重要なのは「区分」ではなく、「指定商品・役務」!