「動き商標」とは?

「動き商標」とは、平成26年の商標法改正によって新たに認められた、「新しいタイプの商標」のうちの一つです。

商標法上では、「動き商標」につき「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標」と定義されていますが、特許庁では、もう少し簡潔に、「文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標」と説明されています。

「動きの商標」であるためには、前提として、商標であること(商品・サービス等の識別標識や企業のハウスマークであること)、及び、時間の経過に伴う標章の変化(経時的変化)があることが必要です。

定義だけを聞いてもあまりイメージが湧かないかもしれませんので、登録例を何点か挙げてみます。

<例1:登録5804316 株式会社ワコール>

(J-PaltPat より引用
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2015-030273/B8A93267765CE00E1AC11667B54CCF063B6A25E482960D593F2E8D3171DD3BE4/40/ja

<例2:登録5860816 株式会社永谷園ホールディングス>

(J-PaltPat より引用
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2015-042430/C0475FB605445BF75F4FA08477374AC0755ACEB2A6E4CF1FE7710F6B6D482A32/40/ja

このように、「動き商標」では商標について一連の動きを登録することができます。

上記の登録例の他には、映画スターウォーズなどでおなじみの20thCenturyFox社(現20thCenturyStudios社)の映画のオープニングで流れるロゴの表示や、国内では、菊正宗酒造のCMで使用されている風呂敷が四方に広がって酒瓶が現れるもの、東宝映画のオープニングで流れる荒波をバックに東宝のロゴが登場するものなどもあります。

動き商標の登録例としては、CM動画内で使われる企業名・企業ロゴ・商品名・商品ロゴなどを表示する数秒間~十数秒間の短時間のアニメーションが多くなります。

よって、実際に出願をしている企業は、現在のところTVCMを打つような中~大企業が多い印象ですが、現在はYouTube等ネット配信での広告動画の提供機会もあるため、企業規模に関わらず、動き商標の利用価値が考えられます。

動き商標の出願方法

動き商標の出願方法は、基本的には通常の商標出願時と同じですが、願書において商標の「動き」を説明するという点で特徴的です。

図や写真を用い、所要時間にも触れながら標章の変化を解説することで、登録を希望する動き商標を特定します。

これまでに登録査定を受けた動き商標の説明を見てみると、イラストで動きの変化を説明しながら時間経過と所要時間を説明しているものが多く見受けられます。

通常の文字商標や図形商標と比べ、少々煩雑に感じられるかもしれませんが、動き商標は、ユーザーや消費者に商標を印象付け愛着を呼び起こす力が期待されることから、単なる文字商標や図形商標よりも強い訴求力を有する可能性を秘めています。

動き商標の登録が認められるには?

「動き商標」「新しいタイプの商標」と言っても、登録要件は基本的には文字商標や図形商標と変わりません。
ただ、商標がどのような動きをするのかを特定する資料も用意しなければならない点は「動き商標」に特有の要件です。

また、その動き商標の変化の状態を総合的に観察した際、識別性(オリジナリティ)があること、また、他者の登録商標と同一又は類似していないこと、が必要となります。

まだあまり馴染みのない商標かもしれませんが、将来、登録を検討することがあるかもしれませんので、ぜひご参考にしていただければと思います。

動き商標の登録をご希望の場合は、弁理士にご相談されることをお勧めします。