意匠の国際出願の新たなルートとして2015年から利用可能になった「ハーグ協定」。
ハーグ協定」とはどのようなものなのか、わかりやすく解説いたします。

ハーグ協定とは?

意匠を海外に出願する場合のルートとして、2015年5月から新たに利用可能となったルートが「ハーグ協定」です。

ハーグ協定とは、意匠の海外出願において国際事務局に出願することで指定国への出願・登録を一元化するシステムで、日本を含めて世界62カ国が加盟しており、既にEUや米国などの主要国が加盟しています。

また、2022年2月に中国がハーグ条約に加盟し、2022年5月5日より中国を指定したハーグ出願が可能になりました。他にも、ロシアやカナダなどが加盟を検討中です。

ハーグ協定を利用した出願手続の流れ

ハーグ協定ルートで意匠の海外出願をおこなう場合、まず必要書類をまとめてWIPO国際事務局に出願します。(国際出願)※商標の国際出願のように、本国出願・登録は条件とはなっていません。

国際出願後、WIPOによる方式審査が行われます。
方式審査とは、記載漏れなどの書類不備がないかどうかのみをチェックするものです。

これを通過することで指定国への出願が完了します。
この手続きの段階を「国際登録」と言いますが、この時点では、権利は発生していません。

そして、国際登録から12か月後、WIPOのウェブサイトにて出願した意匠が公開されます(国際公表)。
指定された各国は、国際公表のあと6か月~12か月以内に審査の結果を通知します。

審査の結果、登録が認められた場合には晴れてその国での意匠権が発生します。

なお、国際公表のタイミングは、別途の申請によりある程度変更することが可能です。
審査を急ぎたい場合、国際登録時に出願意匠を公開することもできます。

登録が認められず、「拒絶の通知」が届く場合もあります。
その国の登録の条件を満たしていない場合に通知されるもので、登録できない理由が記載されています。

この通知が来た場合は、その国の現地代理人を通じて出願書類の内容を修正したり、審査官の意見に反論する必要があります。(この手続きを中間応答と言います。)

修正により登録の条件を満たしたり、審査官が反論に納得してくれれば、登録が認められます

登録となった場合、5年間の存続期間が設定されます。
以後、5年ごとの更新をおこなうことで、国によって最短15年/最長25年の間、意匠権を維持することができます。

ハーグ協定のメリット・デメリット

ハーグ協定を利用した意匠の国際出願をおこなうメリットは

  • 1つの出願で複数の国に出願することが可能
  • 1つの出願に複数の意匠を含めることが可能
  • 英語・フランス語・スペイン語のうち1言語で出願すれば良いため、各国ごとの翻訳の手間が省ける
  • 拒絶の通知なく登録となった場合には、現地代理人が不要
  • 住所変更などの手続きは、WIPOに対してのみ行えば完了する

などが挙げられます。

ハーグ協定が制定される前の意匠の国際出願では、各国ごとに直接出願しなければならず、現地代理人費用翻訳費用などコストが高くなる傾向にありました。

また、登録後の更新も各国ごとに管理しなければならず、権利の維持管理にも手間がかかっていました。

ハーグ協定を利用するルートは、個別に出願するよりも手間やコストを削減できる非常に有益なルートだと言えるでしょう。

デメリット

デメリットとしては、複数の国に対して1つの書類を出願することになるため、各国の事情に合わせた出願ができない、という点です。


ハーグ協定はあくまでも手続きを簡単にする制度であり、世界共通の審査の基準が作られているわけではありません。

つまり、国ごとに登録となる要件が異なるため、とある国では登録の条件を満たしていても、別の国では満たしていないというケースが生じてしまいます。

ハーグ協定を利用した出願はコストを抑えるには効果的ですが、出願国の組み合わせによっては、中間応答を前提にハーグ出願をする必要がある点に注意しましょう。

また、各国の事情に合わせた戦略を取りたい場合は、出願時に現地代理人のアドバイスを得られる「パリ条約」を利用した個別出願の方が効果的と言えます。

海外での意匠登録を目指すにあたり、コスト戦略、どちらを優先したいかを検討したうえで出願ルートを決めるとよいでしょう。

海外への意匠登録出願をご検討の際には、弁理士に相談されることをお勧めします。