「商標調査」とは?

商標調査」とは、簡単に言うと「登録したいと考えている商標が登録できそうかどうかの調査」です。

商標登録が認められるためには、特許庁での審査を通過し、登録が認められる必要がありますので、実際に登録が認められるかどうかは、審査が終了するまでわかりません。

しかし、登録が認められる可能性があるかどうか、どのくらいの可能性で認められそうかは、事前に調査することである程度確認することができます。

それが、「商標調査」です。

特許庁での審査は、商標法に定められたルールに則って行われますので、出願前の商標調査にて、登録したい商標が商標法のルールをクリアしているかどうかを調査することで、登録の可能性を把握することができるのです。

また、商標調査をすることで、自社が使用する商標が第三者の商標権を侵害していないかどうかを確認することもできます。

実は、商標調査は自分でも行うことができますので、以下、自分でできる商標調査と、プロに任せる商標調査についてご紹介します。

自分でできる商標調査

特許情報プラットフォーム J-PlatPat』というツールを利用すれば、自分で商標調査を行い、「同一の先行商標が無いかどうか、また類似と判断され得る先行商標がないかどうか」を確認することができます。

商標の類似について

登録が認められた商標の権利(効力)は、その商標と類似(商標法上似ていると判断されるもの)にまで及びます。
そのため、特許庁での商標審査では、出願した商標が先行商標とまったく同一でなくとも、商標審査基準等に照らして、先行商標と類似と判断されると登録が認められません。

また、商標の類似判断については、商標審査基準上、①外観(商標の見た目)②称呼(商標の読み方)③観念(商標が与える意味や印象)等を総合的に考慮してなされるものとされています。

J-PlatPatの使い方

今回は、「特許庁」の商標登録を検討していると仮定して、具体的にご説明します。

(1)トップページ上部「商標」タブの中の、「商標検索」をクリックします。
そうすると「商標検索」のページへ移ります。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

(2)「商標(マーク)」の枠の中の、「検索項目」で「商標(検索用)」を選択し、キーワードには、「特許庁」と入れて、下部の「検索」をクリックします。そうすると、同一の先行商標が出てきます。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

(3)今度は、「検索項目」で、「称呼(単純文字列検索)」を選択し、キーワードには、「トッキョチョー」とカタカナで入力し、下部の「検索」をクリックします。
そうすると、称呼が同一と判断され得る先行商標が出てきます。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

ここが重要!!

商標の類似判断においては、称呼(読み方)が重視される傾向があるため、先行商標と称呼が同一ですと、商標も類似と判断される可能性が高まります。

ちなみに、商標の類似審査に称呼が重視されるようになったのは、かつての商品・サービスの商取引が電話で行われることが一般的であり、その際に商品・サービスの名称の読み方が他者のそれと同じだと、需要者が混同してしまうおそれがあるためであると言われています。

ココにご注意!!

「称呼(読み方)」に関する検索では、「キーワード」には検討商標の自然な読み方を、カタカナで入力します。
他の文字で入力すると、エラーとなり検索できません。
次にご説明する「称呼(類似検索)」でも、「キーワード」にはカタカナで入力します。

(4)最後に、「検索項目」で、「称呼(類似検索)」を選択し、キーワードには、前述同様、「トッキョチョー」とカタカナで入力し、下部の「検索」をクリックします。
ここでは、称呼が類似すると判断され得る先行商標が出てきます。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

ここまでやってみると、同一/類似と判断され得る先行商標を、ある程度は確認できたことになります。

検索テクニック!! (部分一致検索、前方一致検索、後方一致検索)

商標検索((4)「称呼(類似検索)」検索を除く)において「キーワード」を入力する際に、実は、検索結果の幅を広げられるテクニックがありますのでご紹介します。

キーワードの前後や、前、後ろに「?」を付けて検索すると、そのキーワードを部分的に含む、先行商標が出てきます。
ex.江崎グリコ株式会社さんの登録商標である「プリッツ」(第1028688号)を検索する場 合は「?プリッツ?」で検索します。

検索結果には、「スプリッツ」や「サケスプリッツァ」、「ショコラプリッツ」「スプリッツァー」などが、出てきます。

上述のとおり、「称呼」は特に重要な判断材料となる傾向がありますので、幅広く類似/同一の先行商標を確認しておくことが大切です。

類似群コードについて

商標調査では、指定する「類似群コード」が重複している、同一/類似の先行商標の存在を確認することが大切です。
審査の際には、「類似群コード」が重複している商標に関して、同一/類似の判断がなされるためです。

J-PlatPatでの商標検索では、「類似群コード」を指定して検索することができます。
「商標検索」ページの「商品・役務」の枠を活用しましょう。

検索項目で「類似群コード」を選択し、キーワードに類似群コードを入力することで指定できます。(なお、検索項目で「区分」を選択し、キーワードに区分の数字を入力すると、区分を指定して検索することができます。)

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

なお、指定する類似群コードを探し出すのは、慣れないとかなり難しいかと思います。
そんな時には、同業の企業さんの先行商標を検索し、どんな類似群コードを指定しているかを参考にしてみることもできます。

商標検索結果として出てきた、同業の企業さんの「登録番号」をクリックすると、「商標出願・登録情報」ページへ移ります。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

このページの下部に、指定された商品/役務の記載があるかと思います。
この部分にある、アルファベットと数字の組み合わせが「類似群コード」です。

画像:「J-Platpat特許情報プラットフォーム」より引用

この様に、J-PlatPatでは同一/類似の登録商標があるかどうかを確認することができます。

商標登録は、同一/類似の先行商標がなければ可能というものではありませんが、ここでヒットしなければ、ひとまずクリアすべき要点の1つは突破できたと考えられます。

ただし、特許庁の原簿登載と特許情報プラットフォームの反映には多少タイムラグが存在するため、注意が必要です。

商標の類似判断は、商標法や商標審査基準等に則った判断がなされるため、ご自分での調査結果に少しでも不安がある場合は、次にご紹介するように、プロに商標調査を依頼されることをお勧めします。

プロに任せる商標調査

商標調査では、「同一/類似の登録商標がないかどうか」だけでなく、「商標に識別力(オリジナリティ)があるか、また公序良俗に反しないかまたその他の拒絶理由に該当しないか」という部分も確かめておくことが大切です。

しかし、この部分についての判断はなかなか自分では難しいため、プロに依頼することをお勧めします。

また、権利侵害のリスクも含めて調査する場合にも専門的な調査が必要となるため、プロに依頼すると良いかと思います。

なお、識別力やその他の拒絶理由については、別の回でご紹介できればと思います。

まとめ

商標登録出願をする前に「商標調査」を行うことで、より登録可能性の高い状態で出願することができます。

自分で調査することもできますが、商標登録のプロに依頼すれば、多岐にわたる特許庁の審査項目も踏まえた、より高度な商標調査を実施してもらうことができます。

商標登録、商標調査をご検討の際には、弁理士や特許事務所へ依頼されることをお勧めします。