商標登録を検討する際、ロゴを登録するか、文字だけで登録するか、悩まれることがあるかもしれません。
今回は、ロゴ商標と文字商標とはそれぞれ何か、そしてロゴ商標と文字商標どちらを選択すると良いのかについて解説いたします。

ロゴ商標と文字商標

まず初めに、どのようなものが「商標」として認められるかを簡単にご紹介します。
商標法第2条1項では、前提として「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」(商標法第2条第1項柱書)である旨が定義されています。

この中で、「文字」にあたるのが文字商標、「これらの結合」にあたるのがロゴ商標です。
商標を構成する要素が文字だけのものを文字商標と呼び、文字+記号や、文字+図形または図形・記号のみといった、商標の構成内に記号・図形またはデザイン要素が伴っている、若しくは図形・記号それ自体からなる商標を一般的にロゴ商標と呼びます。(なお、「ロゴ商標」の中でも2以上の文字や記号・図形などが組み合わせられた商標を正式には「結合商標」といいます。)

例えば、以下の有名スポーツブランドの『ナイキ(NIKE)』の商標では、単に『NIKE』とだけ表記するものが文字商標で、文字とスゥッシュと呼ばれるマークを組み合わせたものと、スゥッシュ(図形)のみのものがロゴ商標になります。

<文字商標>

(特許情報プラットフォーム J-PlatPat より引用)

登録番号:第6509765号
権利者:ナイキ イノベイト シーブイ

<ロゴ商標(文字と記号の結合商標)>

(特許情報プラットフォーム J-PlatPat より引用)

登録番号:第2098259号
権利者:ナイキ イノベイト シーヴィー

<ロゴ商標(図形または記号のみからなる商標)>

(特許情報プラットフォーム J-PlatPat より引用)

登録番号:第6445528号
権利者:ナイキ イノベイト シーブイ

ロゴ商標と文字商標どちらを選ぶべきなのか

上部でもご説明しましたが、ロゴ商標は商標の構成内に記号・図形またはデザイン(以下、マークと呼びます)の要素が伴っている、若しくはそれ自体の商標となります。

「文字+マーク」が結合した状態の全体を商標として登録した場合、ロゴ全体が一つの登録商標としての効果を持つことになります。

そして、商標権の効力は登録商標と全く同一の商標だけでなく類似した商標にも効果が及びます。

つまり、文字やマークなどが結合したロゴ商標を登録した場合には、文字部分だけが類似する場合、マーク部分だけが類似する場合、文字とマークの両方が類似する場合のいずれであっても「全体として類似している」と判断される可能性があり、広く商標権の効力が及ぶと考えられます。

そのため、ロゴ商標を登録した場合、別個に文字商標を取得しないことも珍しくありません。

ただし、ロゴ商標の中には文字が容易に認識できない状態でマークの要素に追加している場合もあるので、この場合は別個に文字商標を登録する必要があります。

一般的に、ロゴ商標は文字もマークも同時に広く保護できるという点で優れていますが、一方で、例えば文字の一部を改変し、マークを類似した別のものに差し替えることで他者が「別の商標だ」と主張する隙を作りやすいとも言えます。

また、文字とマークを一緒にしたロゴ商標で商標登録を受けた場合は、あくまでもその外観(商標の見た目)全体が登録商標となります。

そのため、例えば、文字とマークの配置の変更マーク等のデザインを変更文字部分またはマークのみで使用するなどしていた場合には、商標法上、登録商標の使用とはみなされない可能性があります。

上記のような、登録商標の使用とはみなされない使用や、そもそも登録商標を継続して(3年以上)使用していない場合には、法律上、『継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないとき』(商標法第50条第1項)に該当し得、他者からの不使用取消審判の請求によって、登録商標が取り消されてしまうリスクもあります。

不使用取消審判請求(商標法第50条)については、別の記事で解説しておりますので、ぜひご覧ください。

なお、文字商標で登録を受けた場合には、その文字をロゴ化またはフォントを変更するなどデザインを施したものを使用していても、その具体的な使用態様にもよりますが、基本的にはそのデザイン中に登録を受けた文字を含んでいれば登録した文字商標の使用とみなされることが多いため、上記不使用による取消のリスクを低減できるものとなります。

したがって、一般的に文字部分やマーク部分について広く保護が可能な商標を目指すのであれば、文字やマークを結合させた1件のロゴ商標にまとめて登録を受けることも考えられますが、実際は登録商標と実質的に異なる使用を行っていて、せっかく登録した商標が取り消されてしまうリスクを低減する観点や、一歩踏み込んで類似商標が入り込む余地のない商標を目指す場合は文字とマークの両方を別々に登録することが最も望ましいです。

ただし、コスト面においては、ロゴ商標が1件の商標登録のみで完結するのに対して、文字とマークを個別に登録した場合は2件分のコストがかかることに留意しておきましょう。

文字商標で登録するか、ロゴ商標で登録するかを悩まれた際には、一度弁理士や特許事務所へご相談されることをお勧めします。