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関連意匠制度とは、1つのデザインを中心としてそのデザインのバリエーションを保護するための制度です。
効果的に利用することで、権利を主張できる範囲が広がるため、模倣品や類似品の流通防止に高い効果を発揮します。
本記事では、関連意匠制度について詳しくご説明いたします。
関連意匠制度とは?
意匠登録は、原則、出願前に公知になっているデザインに類似するデザインを登録することはできません。
しかし、製品のデザインを開発する過程において、一つのデザインコンセプトを基軸にして類似する複数のデザインを製作することがあります。
その際に、先に登録した意匠権や同時に出願した意匠を理由に、同一コンセプトの類似品が拒絶されてしまうと、デザインを開発した側に不利益が生じてしまいます。
そこで、登録意匠や出願中の意匠に類似するデザインであっても、出願人が同一であれば意匠登録が認められるように「関連意匠」という制度ができました。
関連意匠のメリット
例えば、横に複数のラインが入ったペットボトルAとペットボトルBを開発し、どちらも互いに類似していると仮定します。そこに、ペットボトルBにのみ類似するペットボトルXが第三者によって販売されました。
その際、ペットボトルAのみを登録していた場合、ペットボトルXはペットボトルAには類似していないため、ペットボトルAの意匠権でペットボトルXを排除することはできません。
一方、関連意匠制度を利用してペットボトルBも登録しておけば、ペットボトルBに類似するとしてペットボトルXを差し止めることができます。
(※上記の例は制度の概要を簡単に説明するためのものです。実際には、出願前に公知になっていたデザインに応じて類似の範囲が左右されますので、類似品を販売する側から出願前に公知になっている意匠を理由に類似しないと反論されることもあります。)
このように、1つのコンセプトのもと類似するデザインを複数権利化できるため、その分、類似範囲(権利を主張できる範囲)が広がります。
第三者はこれらの広い範囲全体に類似しないように商品をデザインする必要がありますので、似たような商品を作りにくくなります。
関連意匠制度を利用する条件
関連意匠制度を利用して意匠出願をするには、いくつか条件があります。
<1>出願人が同一であること
異なる出願人を設定することはできませんので、ご注意ください。
<2>基礎意匠の出願日から10年以内に関連する意匠を出願すること
改正前は、本意匠が設定登録により公開される前に関連意匠を出願しなければなりませんでしたが、現在は本意匠が設定登録によって公開された後でも、基礎意匠の出願日から10年以内であれば関連意匠を出願できるようになりました。
<3>設定登録の時点で、本意匠(≠基礎意匠)の権利が存続していること
意匠法の改正により、従来は認められていなかった「本意匠のみを放棄し、関連意匠は存続させる」という手段を取ることができるようになりました。
ただし関連意匠の設定登録の時点で本意匠の権利が存続している必要がありますので、本意匠を放棄するタイミングには注意しましょう。
関連意匠制度の注意点
関連意匠制度は、前述の通り類似するデザインまでも権利化することで広範囲にデザインを保護でき、他者が類似品を製造・販売するハードルを高めるという大きなメリットがあります。
ただし、関連意匠制度を活用して意匠登録をした場合、本意匠だけでなく関連意匠の出願・維持にもコストがかかることには留意しておく必要があります。
意匠登録出願する際に支払う特許庁への印紙代は、1意匠につき16,000円、登録料は1年目から3年目までは1年につき8,500円、4年目から25年目までは1年につき16,900円の納付が必要となります。
このコストは関連意匠であっても同じです。
もし、1つのコンセプトをもとに制作した複数のデザインの中で、共通する形状等があれば、部分意匠制度も活用することで費用を抑えることも可能です。
また、もう製造・販売しない本意匠等を放棄して、関連意匠のみを存続させるといった方法でもコストを抑えることができます。
どのような方法が最適かは、デザインや販売戦略、予算などによって異なります。
ぜひ、専門家のアドバイスを受けて、自社にとって最適な知財戦略を練ることをお勧めします。