特許・実用新案

2020.07.07

アメリカ独自の制度:限定要求とは?その対応方法

特許法は、各国において独自の制度が設けられています。日本においては問題なく登録される出願であっても、国によっては登録されなかったり、権利範囲が日本よりも狭くなってしまうことがあります。このような事態を防ぐため、各国の特許法を学んでおくことは極めて重要です。特にアメリカ(米国)では、他の国では見られないユニークな制度が多く存在しています。

限定要求とは?

限定要求(Restriction Requirement)とは、一つの出願書類の中に、2以上の独立した区別可能な発明が含まれている場合、審査官が出願人に対して審査対象とする発明を選択させて、発明を限定することを要求する制度です。

すなわち、互いに関連性が無い発明は、本来はそれぞれ別の出願としなければならないところ、1つの出願としてしまうと、どれか1つの発明を選択させられ、選択しなかった発明は審査が行われず、その出願では権利化ができないということです。

互いに関連性が無い発明としては、例えば、『化粧品と時計』のように、明らかに関連性が無い発明以外にも、『化粧品と化粧道具』のように、一見関連性があるように見える発明であっても、特許法上の基準を満たしていなければ、関連性が無いと判断されるため、注意が必要です。

限定要求と似た日本の特許要件として、『発明の単一性』という要件があります。関連性が無い複数の発明に対して、何れかの発明しか審査がされないという点で共通しますが、限定要求と発明の単一性とは、『その判断の厳しさ』、及び『その後の対処方法』という観点で異なります。

米国では認められない発明の組み合わせ

日本においては、『物の発明』と『その物の製造方法の発明』を1つの出願とした場合、基本的には両方審査してもらえます。

しかし、アメリカにおいては、『物の発明』と『その物の製造方法の発明』との間であっても、関連性が無い(互いに区別可能)であるとして、どちらか片方を選択させられることが普通に起こり得ます。

このように、アメリカでは、発明が互いに関連するか否かの判断が非常に厳しく、日本では1つの出願で良くても、アメリカでは複数の出願に分割せざるを得ないことが多くあります。

限定要求の対応方法

実際に限定要求が通知された場合、どのように対応するか悩む方が多くいらっしゃいます。限定要求の対応方法は、大きく分けて3つあります。

(1)反論(traverse)する

審査官は、互いの発明に関連性が無いと判断して限定要求を通知しますが、この判断に対し、「これらの発明には関連性がある。」との反論をすることが可能です。

しかし、実質的には、限定要求に対する反論はデメリットが多くあり、メリットがほとんどないと言われています。その理由は以下の通りです。

・反論が認められる可能性が極めて低い。米国特許商標庁長官(審査官よりも偉い人)に訴える(請願;petition)ことが可能であるが、そこまで費用と時間をかけるのであれば、分割出願を行った方が効率的

・限定要求は、たくさんの発明について審査する審査官の負担を減らすための制度であるところ、反論することで審査官の心証を害し、その後の審査で不利に扱われることがある

・限定要求を否認することは、それぞれの発明が『独立した区別可能な発明ではない』ことを自白することになり、2つの発明の間の容易性を自白することに繋がる

なお、反論を行う場合であっても、後述するグループを仮に選択する必要があります。

 

(2)限定要求に従って発明のグループを選択する。

審査官は、複数の請求項(クレーム)をそれぞれ関連があると判断したグループに分類した上で、限定要求の通知をします。

上記の場合、Group I、又はGroup IIの中から、審査の対象とするグループを1つ選択します。

選択しなかったグループのクレームについては、補正によりcancelという状態にするか、withdrawnという状態((4)で詳述いたします)に修正します。

 

(3)限定要求に対して一部承服し、一部反論する。

(1)で述べた限定要求に対する全面的な反論の他に、例えば、『クレーム6がグループⅡであると判断されているが、グループⅠが妥当である。』との反論を、理由を添えてすることが可能です。

 

(4)withdrawn、rejoinderについて

選択しなかったグループに属するクレームは、(2)で述べた通り、withdrawnとするか、cancelとします。

 

(a)withdrawnとcancelの違い

(b)rejoinderについて

限定要求に従って取り下げられたクレーム(withdrawnクレーム)については、出願が特許可能状態になった際(選択した発明が特許可能状態になった際)には、特許可能クレームに対して一定の関係を有する場合には再結合される可能性があります。このような関係としては、以下の関係が例示できます。

 

(i)プロダクトクレームと、その全ての限定事項を含むプロセスクレーム

(ii)サブコンビネーションクレームと、複数のコンビネーションクレーム

(iii)属クレームと種クレーム

例えば、上記(i)であれば、以下の例1、例2の場合は再結合の可能性があり、例3では、再結合されません。

まとめ

限定要求が通知された場合、グループを選択するか反論するか、選択しなかったグループはwithdrawnとするかcancelとするか、cancelとしたクレームは分割出願するのか等、検討する事項が山積みであり、事業との兼ね合いを踏まえ、戦略的な対応を取る必要があります。最も効果的な対応を行うために、是非、出願の段階から専門家にご相談ください。

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2020.07.07

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