特許は、ビジネスに活かすことで巨額の利益を得たり、研究分野においては名声をもたらすことができるものです。

この特徴は、特に知的財産との関わりがなく生活している方であっても簡単に「特許とはどのようなものか?」とイメージすることができるでしょう。

とはいえ、特許とは、ただ登録に至れば自動的に利益や名声を得られるものではありません。

特許とは、どのように活用していくのかを戦略的に計画してこそ最大限の効果を発揮します。

ここでは、特許の活用戦略について紹介しましょう。

特許の活用戦略には大きくわけて2つの戦略があります。

クローズ戦略・オープン戦略の2つです。

それぞれの活用戦略について見ていきましょう。

 

特許のクローズ戦略とは?

特許を活用した戦略の中で最もメジャーなものがクローズ戦略です。

特許の基本的な性質を活かして、自社が所有する特許を独占化することで事業を守っていく戦略です。

クローズ戦略の活用が顕著なのが製薬業界です

製薬業界は、薬の成分という1つのキー特許を守ることで強固に利益を守ることができるため、製薬業界の基本戦略はクローズ戦略が採用されています。

クローズ戦略を実践するためには、開発・製造・販売という全ての行程を自社で実施する必要があります。

そのため、各工程・各部門を全て自社で確保できる大企業に適した戦略だといえるでしょう。

また、クローズ戦略の一環として、敢えて特許を出願しないという戦術もあります。

この戦術をブラックボックス化と呼び、その名のとおり発明を不透明化し秘匿する手法です。

特許に弱点があるとすれば『期限』と『公開』の2つでしょう。

まず特許権は「出願日から20年間(医薬などに限り最大5年の延長可能)」しか保護されません。

つまり、出願から所定年数が経ち、期限が切れてしまえば、その発明は誰でも実施して良い共有財産となります。

さらに、特許は出願から1年6ヶ月後に内容が公開されます。

公開は出願した結果が登録であっても拒絶であっても漏れなくおこなわれるため、最悪の場合、公開された上に特許権の獲得に至らなかったというケースもあり得ます。

誰に知られるでもなく、自社が強力に発明を独占化していく上では「あえて特許を出願しない」という選択肢もあるということです。

ブラックボックス化が強力に働くのが『ノウハウ』を守りたい場合です。

ノウハウは無断で実施されても形に残りにくいため、特許化するよりも秘匿するほうが経営の堅牢化につながることがあります。

代表的な例として挙げられるのが『コカコーラ』でしょう。

コカコーラの成分・製法は、ごく一部の社員と弁護士だけで厳格に秘匿しています。

すでに100年以上もその成分・製法を秘匿して確固たるシェアを維持していますが、もし特許化していれば同じ味の飲料が数多く出回っていたことになるでしょう。

一部のコカコーラ社員がライバル社へレシピを売り付けようとして逮捕された事件もあったほどですから、コカコーラ社はノウハウを秘匿するというクローズ戦略を見事に成功させているといえるでしょう。

 

特許のオープン戦略とは?

特許ビジネスにおいて多くの企業が採用しているのがオープン戦略です。

特許のオープン戦略とは、自社が所有している特許を他者に使用許諾することで対価を得る戦略のことです。

クローズ戦略が『独占』によって大きな利益を得るという特徴がありますが、これに反してオープン戦略は他者と『共同』することで事業拡大を図るという特徴があります。

オープン戦略で最も代表的な手法がライセンス契約です。

オープン戦略では、ロイヤリティと呼ばれる実施許諾料の支払いを受けることで収益化を図ります。

また、自社の発明と他者の技術を集合させて商品を開発したり、製造・販売の拡大を図る際に有効なのがクロスライセンス契約です。

クロスライセンス契約を締結し、自社の特許実施を廉価または無償にすることで、他者の特許や技術、製造・販売のノウハウを利用してシェア拡大を図ることが可能となります。

オープン戦略は、ITや電子機器業界などのように中小のベンチャー企業が多数存在する業界で活用されることが多い戦略だといえるでしょう。

 

自社にマッチした特許戦略は?

自社で新たな発明を編み出した時、その発明をどのように活用していくのかをしっかりと検討する必要があります。

特許権を得て自社が独占するのか、他者に許諾してライセンスビジネスを展開するのか、あえて特許化を狙わず秘密の情報としてシェアを維持するのかを、経営ビジョンと照らして長期的な視点で判断する必要があるでしょう。

実りある特許戦略の策定には、ぜひ弁理士のアドバイスを取り入れて頂きたいものです。

経験豊かな弁理士は、発明を最も有効に活かすことができる戦略を見出してくれます。

発明の開発段階から弁理士のアドバイスを受けていれば、明確なスタンスのもとに開発に取り組むことも可能になるでしょう。