コピー商品輸入防止に最も効率的な『水際取締』

商標権や著作権を侵害したコピー商品を市場から排除する場合には、警告をして止めさせる、それでも解決しない場合には、裁判所に差止請求訴訟を提起する方法が一般的です。

ただし、商標法や著作権法を根拠とした差止請求を求めるには、相手方を特定した上で個別に警告書を送付したり、訴訟を提起する必要があります。

差止請求に伴う長期間の訴訟手続き、これに伴う労力とコスト、すでに流通しているコピー商品の回収などを考慮すると、特に海外から大量に輸入されてくるコピー商品を排除する方法としては非効率的だと言えるでしょう。

そこで、差止請求訴訟に代わって、海外からのコピー商品の輸入を差し止める最も有効な手段として考えられるのが、通称『水際取締』と呼ばれる『輸入差止申立』です。

水際取締は商標法や著作権法ではなく、税関定率法を根拠にした対策です。

輸入差止申立が受理されれば、税関検査において知的財産侵害疑義物品を発見した場合、税関が権利者と輸入者の双方に通知し、輸入者は疑義に対する意見や証拠を提出することになります。

輸入者が提出した意見や証拠では疑義を解消できない場合は輸入を差し止めることができ、さらに輸入者がコピー商品だと知らなくても差止の対象となるため、輸入者の認識の有無に関わらず海外からのコピー商品流入に対して素早く強力な効果を発揮します。

 

水際取締の現状

財務省では四半期ごとの水際取締の実績を発表しています。

平成29年1月から3月の実績によると、税関で差し止めた全体の件数は6,952件物品の点数は11万7,432点に及んでいます。

差止物品のうち全件数の98%、全点数のうち約58%が商標侵害物品であり、水際取締がいかに商標権を侵害したコピー商品の流入に効果を発揮しているかが分かるでしょう。

仕出国別に見ると件数・点数ともに中国が突出して多くなっており、件数では約93%、点数では約82%が中国からの輸入品でした。

中国と比較すると大幅に件数・点数は減少しますが、香港・韓国・フィリピンからの物品も数多く差止を受けています。

いずれにしても、水際取締によって税関で差止を受けた事例の大部分がアジア圏からの輸入であることは間違いなく、今後の取締強化と併せて、アジア諸国における知的財産保護の必要性を痛感させられることでしょう。