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― 第35類だけで大丈夫?商品の区分で出願すべき理由とは ―
Amazonでのブランド保護のために商標出願を検討している方も多いのではないでしょうか。
今回は、「Amazonブランド登録」と商標出願の関係、出願時の注意点について、商標の専門家の立場からわかりやすく解説します。
Amazonブランド登録とは
Amazonブランド登録(Amazon Brand Registry)とは、有効な登録商標を持っている出品者が登録できる、ブランド所有者向けのプログラムです。
ブランド登録を行うことにより、
- ①Amazon内にストアページ(自分のブランド専用ページ)を作成できる
- ②相乗り業者や転売屋を排除しやすくなる
- ③ディスプレイ広告が利用でき、消費者の目につきやすいところに広告が出やすくなる
等のメリットがあげられます。
Amazonブランド登録には商標出願が必要
Amazonブランド登録を利用するには、商標の「出願」が必要です。
登録済みの商標である必要はなく、出願中であっても以下の情報を提出すればブランド登録申請が可能となります。
- 商標出願番号(日本国特許庁に出願した商標の受付番号)
- 商標登録願(出願内容の確認ができるもの)
- 実際に販売する、商標が印字された商品やパッケージの写真
商標が審査中であっても、これらをAmazonに提出することで仮登録的にブランド保護を開始できる仕組みとなっています。
なお、商標の出願だけでも登録手続きは進められますが、正式な商標の権利行使には商標の登録完了が前提となるため、早期の商標出願と審査結果への応答が重要です。
ブランド名と販売商品を決めたうえで出願を
Amazonブランド登録申請においては、
- ①商標出願を行った商標名(ブランド名)
- ②実際にAmazonで販売する商品やパッケージに使用する表記
- ③Amazonブランド登録申請をする表記
が一致している必要があります。
出願形式による、Amazonブランド登録時の名称の違い
・文字商標で出願した場合:
→Amazon上ではその表記がブランド名として認識されます。
・ロゴ商標で出願した場合:
→ロゴ内に含まれる文字の要素がAmazonブランド名として扱われます。
図形のみはブランド名としては機能しません。
この時点で誤ると、ブランド名と実際の商標に齟齬が生じ、Amazonブランド登録が認められないケースもあるため、注意が必要です。
例えば、「CT」というデザインロゴの下に「コスメTIME」と文字が記載された商標の出願を行った場合、Amazonブランド登録は「CTコスメTIME」となってしまいます。
商標とAmazon上のブランド表記が一致していない場合、Amazonブランド登録が却下される例もあります。
(例)商標は「コスメTIME」で出願→Amazonに「TIME」として申請→商標不一致でAmazonブランド登録申請が却下
第35類だけでは不十分?商品に応じた区分出願がベスト
商標には「商品やサービスのカテゴリ(=区分)」があります。
Amazonでの販売は、自社ブランドとして商品を販売していくものですので、販売する商品の区分(第1類〜第34類)で出願することが基本です。
第35類とは?
第35類は「小売業者としてのサービス」も含む区分で、他社商品を仕入れて販売するビジネスを対象とします。
これは、あくまで小売店やEC店舗等に関する保護です。
(例)コンビニの名前、スーパーのロゴ
特にAmazonは、第三者の小売のプラットフォームの提供及びAmazon側で各種小売業を行っているため、第35類の使用はAmazonが行っていると考えられます。
出品販売者は、Amazonという小売のプラットフォームで、商品を載せて販売していると認識できるため、商品の販売は行っているものの、小売業を行っているとは認められにくいといえます。
自社ブランド商品の場合は?
例えば、自社で開発・製造した「コスメTIME」というブランドの化粧品をAmazonで販売する場合、第3類(化粧品)での出願が適切です。
一方、第35類(化粧品の小売業)で出願してしまうと、商品名としての「コスメTIME」の保護が弱くなり、以下のようなリスクが生じます:
- ・他社が「コスメTIME」の商品名で化粧品を販売しても、商標権の侵害を主張できない可能性がある
→小売業としての保護になるため、商品そのものに対しては間接的な権利効力になってしまいます。 - ・相乗り出品が生じた際に、Amazon側に削除申請を行っても申請が認められない可能性がある
→小売業の提供をしているのはAmazonであり、出品者が提供しているのは商品である、という考えによって削除要請が却下されてしまうおそれがあります。 - ・不使用取消審判を請求され、商標権が取り消されるリスクがある
→小売業として登録していても、実際に「小売業」として商標を使用していない場合、不使用取消の対象となるおそれがあります。
この点、Amazonでの販売は、「商品」として使用が認められ、「小売業」としての使用が認められない可能性があります。 - ・Amazonへの侵害通報(ブランド権限)も弱くなる可能性がある
第35類だけの出願に潜むリスク
商標権の効力が実質的に及ばない
前述の通り、第35類は小売「サービス」の区分です。
つまり「小売店の名前」としての保護であり、「商品ブランド名」としては法的保護が及ばない可能性もあります。
したがって、商品自体に付された「コスメTIME」等の文字は、第35類の商標だけでは保護されないリスクが存在します。
不使用取消審判のリスク
商標法では、登録から3年以上使用されていない商標について、第三者の申し立てによって取消される制度(不使用取消審判)があります。
上述のとおり、Amazon上で商品としては継続販売されていても、「小売業(第35類)」としての使用実績が認められなければ、他者からの請求によって取消されるおそれもあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、実際に販売する商品が該当する商品区分(第1類〜34類)の商品を指定して出願するのが望ましいのです。
Amazon規約変更の可能性にも注意
現在のAmazonの運用では、第35類(小売サービス)であっても、商品区分(1類~34類)であっても、いずれの区分でも商標出願があればブランド登録は可能です。
しかし、これは現時点のポリシーに基づく運用に過ぎません。
将来的に、Amazonが「商品の区分で出願された商標のみを有効とする」方針に変更するリスクも考えられます。
このとき、第35類の小売業で商標出願を行った件については、Amazonブランド登録申請が却下されたり、一度Amazon側で登録されたブランド申請が取消になったりするおそれがあります。
【ポイント】ここだけは押さえて!
- 出願は商標と商品が決まってから行う
- Amazonブランドで登録したいブランド名又は文字要素がブランド名のみのロゴで商標の出願を行う
- 商品の区分(第1類~第34類)が基本である
- 現状は第35類の出願でもAmazonブランド登録が認められているが、様々なリスクがある
商標出願や区分選定についてお悩みの方へ
弁理士法人みなとみらい特許事務所では、Amazon販売を想定した商標出願のアドバイスも多数行っております。
「第何類で出願すればいいの?」「ロゴと文字、どっちを出せばいい?」など、お気軽にご相談ください。




