商品を発表後、思いのほかデザインが好評だったため、「意匠登録をして意匠権を得よう」と考えたとします。
その場合、意匠権を得ることはできるのでしょうか?

以下にてご説明いたします。

原則、商品発表後では意匠登録できない

意匠権について定める意匠法は、第3条において「意匠登録の出願前に国内外において、公然知られた意匠・頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回路を通じて公衆に利用可能になった意匠は登録できない」と規定しています。

この規定に照らせば、新商品を開発し販売を開始した後に意匠登録を出願しても「新規性がない」と判断されて特許庁から拒絶を受けてしまいます。

そのため、新商品をリリースし意匠権によってそのデザインを保護したいと考える場合は、「商品のデザインを公開する前にまず意匠登録出願をする」というプロセスを踏む必要があります。

商品発表後でも意匠登録できるケース

上述の通り、意匠法の規定により、原則は商品の発表後では意匠登録が認められません。
とはいえ、冒頭であげたケースのように、もともとはデザインの特異性に気づかないまま商品をリリースしたところ、デザインが好評だったため意匠登録したいと考えるケースも想定されるでしょう。

そこで、救済措置として意匠法第4条において「新規性喪失の例外」を規定し、一定の要件を満たす場合は商品発表後であっても意匠登録が可能としています。

<条件1>

新規性喪失の例外の適用を受けるには「デザインの公開後(*)1年以内」という期限があります。

商品を発表して1年以内に、意匠登録出願とともに新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書を提出すれば、その発表については審査に用いない(=その発表を理由にした拒絶はされない)ことになっています。

公開とは:
商品の販売に限らず、秘密保持義務を負わない人が、デザインを見ることができる状態にあることを公開と言います。試作品含め、商品のデザインがわかる写真や図面等をSNSやプレスリリースに掲載したり、展示会で発表したり、なども公開にあたります。
なお、秘密保持義務を負う人にデザインを見せることは公開にはあたりません。

<条件2>

新規性喪失の例外の適用を受けることができる公開は、あくまでも創作者や出願人が関与する公開に限定されます。

全く関係のない第三者が市販された製品等にインスピレーションを受けて類似のものを販売した場合、その第三者の発表に対しては例外の適用を受けることはできないため、第三者の商品を理由に拒絶されてしまいます。

<条件3>

全ての公開について、詳細を特許庁に申請しなければなりません。

創作者や出願人が関与する公開であっても、特許庁に申請しなかった公開は新規性喪失の例外の適用を受けることができません。

新規性喪失の例外の適用の証明書を作成する際には、いつ・どこで(誰に)・どのように公開したのかという情報を漏れなく記載しましょう。

(2024年1月11日追記)
※2024年1月1日より、意匠の新規性喪失の例外の適用要件が緩和されました。
これにより、2023年12月31日の出願までは「すべての公開」について特許庁へ申請しなければならなかったところ、2024年1月1日以降の出願より、「一番最初の公開」についての申請で足りることになりました。

このように、公開後の意匠登録出願には注意しなければならないことが増え、さらに出願前に模倣品が出てくるリスクも生じてしまいます。

新規性喪失の例外の適用はあくまでも救済措置であると認識して、商品発表までに意匠登録出願をするのがベストです。