出願中、または、知的財産権を取得された際には、自社の商品やパンフレット等に、その旨を表示することをお勧めします。

なぜ表示したほうが良いのか、表示することにメリットはあるのか?
本記事では、これらの疑問にお答えしながら、表示する際の注意点についても解説いたします。

「出願中」や「権利取得」の表示はしたほうが良いのか?

実は法律上では、特許権・実用新案権・商標権・意匠権等の権利を取得した場合は、そのモノや包装に、取得した旨の記載を付するように努めなければならない、とされています。

しかしこれは、「努めなければならない」ですので、「努力義務」です。
つまり、権利を取得した旨を表示しなくても、法律違反とはなりません。

しかし、中小・スタートアップさんの場合は特に、「権利取得」に限らず、「出願中」と表示することは、戦略として有効と言えます。

例えば、特許権に関してこれから資金集めをしていきたい場合、「特許出願中」であることを表示することでアピールになったり、競合他社に対しては、また違う意味でのアピールになる可能性があります。

また、商標権に関しては、その商標がちゃんと登録されたものであることを示すことができます。

このことが、消費者に対しては「信頼」や「認知」になるかもしれませんし、競合他社に対しては、「けん制」になるかもしれません。

逆に、出願中であることを隠すメリットはと言いますと、挙げられる点は特にないかと思われます。

権利取得後の表示方法~特許~

特許権の場合、
モノの特許の場合は「特許」の文字と「特許番号」
製造方法の特許の場合は「方法特許」の文字と「特許番号」
を記載すること、という旨が法律で定められています。

しかし、冒頭でも述べました通り「努力義務」ですので、上記の様に表示しなくても、法律違反となり罰則を受けることはありません。

よくある表示方法の例としては、製品に付属の書類や包装に特許第○○○号製法特許第○○○号
と記載する方法があります。

権利取得後の表示方法~実用新案~

実用新案権の場合、特許権同様、「登録新案」の文字とその登録番号「登録新案第○○○号を記載すること、
という旨が法律上定められていますが、この通りでなくても法律違反とはなりません。

なお、出願中のものに対し「実用新案登録出願中」と記載することも可能ですが、出願から登録まで3~6か月と短期間のため、登録された後、登録済みである旨を記載する方がお勧めです。

権利取得後の表示方法~意匠~

意匠権の場合も、特許権・実用新案権同様、「登録意匠」の文字とその登録番号「登録意匠第○○○号を記載すること、という旨が法律上定められていますが、この通りでなくても法律違反とはなりません。

権利取得後の表示方法~商標~

登録済み商標の表示方法の1つは、「Ⓡ」(マーク)です。

Ⓡマークとは、よく、商品のパッケージ等に記載されている商品名や会社名の横辺りに小さく付けられている、「Ⓡ」です。
ご存じの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

Ⓡ=「Registered Trademark(登録された商標)」の頭文字Rから来ており、このマークを商標に付けることで、その商標が登録済み商標であることを示すことができます。

また、「商標登録番号」を記載するという方法もあります。
実は、法律上定められている登録済み商標の表示方法は、こちらの方法です。

Webページの下の方や書類等に、「○○(商標名)は○○(権利所有者)の登録商標です。登録番号○○○
などと文章にて記載することで、その商標が登録済み商標であることを示すことができます。

~「Ⓡ」は法律上定められた表示方法じゃないのに使っていいの!?~

上述の通り、法律上定められた登録済み商標の表示方法は、「商標登録番号」を示す方法です。
しかし、繰り返しとなってしまいますが、登録済み商標である旨の表示は努力義務です。

そのため、定められた方法とは違う方法で表示をしても、法律違反とはなりません。
商品のパッケージに表示する際などには、見た目上比較的目立たない、「Ⓡ」を使った表示方法が慣用されています。

~「Ⓡ」に似ているが、意味合いの違う「TM」と「SM」~

Ⓡマークに似ているマークで、「TM」マークと「SM」マークがあります。
これらは、Ⓡマークと混同されがちですが、持っている意味合いが違います。

「TM」=「TradeMark(商標)」を略した記号で、その名称が「商標」であることを示しているにすぎません。
つまり、「登録済み商標」であることを示す意味合いはありません。

「SM」=「ServiceMark」を略した記号で、つまり「役務の商標」を意味します。
これも、TMマーク同様、その名称がサービス(役務)の「商標」であることを示しているにすぎず、「登録済み商標」である旨を示す意味合いはありません。

この様に、TMマーク・SMマークには「登録済みである」という意味は含まれていません。

しかし逆に、「登録済みである」という意味を含まないために、商標登録出願前のものであっても、出願後の審査中のものであっても、使用できるという性質があります。

権利取得後の表示方法~著作権~

著作権は、特許権・実用新案権・商標権・意匠権とは違い、無方式主義が採用されています。
「無方式主義」とは、登録や申請などの手続きをせずとも、著作物が創作されたその瞬間に、自動的に権利が発生する、というものです。

つまり、著作権は、登録や申請をしなくても、その著作物を創作した瞬間に発生します。

よく、「©」マークが付けられているのを目にしますよね。
この©マークを使い、©○○年(公開年)○○○(著作権所有者/社名)と表示することで、著作権を主張することができます。

なお、「All rights rserved」という表示を見たことがあるかもしれませんが、この表示は、ブエノスアイレス条約で必須とされている表示形式です。
現在、この条約が有効とされている国はほとんどありません。

日本も、ブエノスアイレス条約に加盟していないため、「All rights reserved」という表記は法的には意味はありません。

しかし、©マークが文字化けして上手く表示されない場合に備え、念のため、「All rights reserved」と表示しておくことで、著作権を主張できるというメリットもあります。

ここにご注意!

例えば、特許取得していない製品等に対し「特許取得」などと、特許を取得したということをにおわせるような記載・誤解させるような記載をすること、また、取引等の際に使用する資料の中で、特許取得していないのに「特許取得」などと、事実と異なる内容を記載することなどは、「虚偽表示」つまり法律違反となり、罰則を受けてしまいます。

また、商標権の場合、最初出願していた権利範囲から、最終的に取得できた権利範囲が狭まっていることに気づかず(または勘違いをして)、権利範囲以外の製品に対し、商標登録済みである旨の表示をしてしまった場合等も、「虚偽表示」となってしまいます。

出願後、まだ審査が終わっていなかったり、登録料を収めていないことにより、事実上は「登録」になっていない段階にもかかわらず、権利取得済みである旨を記載してしまった場合も上述の通りです。

少しでもわからない、不安な点等がある場合は、まずは弁理士や特許事務所へご相談されると安心かと思います。

まとめ

・出願中や権利取得済みである旨の表示には、メリットを期待できる。
・出願中や権利取得済みである旨の表示は、「努力義務」である。
・権利取得済みである旨の表示方法は、法律上定められているが、その通りでなくても、法律違反となるわけではない。
・権利取得済みである旨を表示する際には、注意点がある。

権利取得済みである旨を表示することには、メリットを期待できます。

しかし、悪意があってもなくても、「虚偽表示」をしてしまうと、法律に違反してしまうことがありますので、注意しましょう。