「特許公報」という言葉をご存じでしょうか。
もしかしたら、「公開特許公報」「特許掲載公報」をご存じの方もいらっしゃるでしょうか。

上述の3つの用語は、名前からも想像できるように、
特許庁により発行される「特許」に関する公報です。

本記事では、混同されがちな「特許公報」「公開特許公報」「特許掲載公報」
の3用語について解説いたします。

特許公報とは?

特許取得の流れについて説明する際に、必ず「特許公報」という特許用語が登場します。

「公報」とは、官公庁が国民に対する通知のために発行する機関紙で、
つまり、「特許公報」とは広い意味では、特許庁が発行する公報のことを指します。

実は、特許庁が発行する公報には「公開特許公報」「特許掲載公報」の2種類があります。

公開特許公報とは?

「公開特許公報」というタイトルで発行され、
出願から1年6ヶ月経過後に、特許出願情報を知らせる公報を指します。

特許出願をすると、1年6か月が経過した後に、審査が始まっていなくても、登録になっていなくても、
出願書類に記載した情報が公開されます。

この情報には、
・出願番号・出願日・公開番号・公開日・出願人・発明者の情報
・出願に係る特許請求の範囲・明細書・図面・要約書の内容
が含まれます。



                              (特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」より)

出願番号や出願人などを示す書誌情報の下に、
【要約】図面が記載されているのが特徴的です。

特許掲載公報とは?

「特許公報」というタイトルで発行され、
特許庁の審査をパスして権利化された特許情報を知らせる公報を指します。

この情報には、
・特許番号・登録日・特許権者・発明者の情報
・権利化された特許請求の範囲・明細書・図面の内容
が含まれます 。


                              (特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」より)

特許番号や特許権者などを示す書誌情報の下に、
【特許請求の範囲】が記載されているのが特徴的です。

 

つまり・・・
「公開特許公報」に記載されている情報は、
あくまで、出願された特許の情報であり、権利化された特許の情報ではないのに対し、
「特許掲載公報」に掲載されている情報は、権利化された特許の情報である
という明確な違いがあります。

いずれの公報も「特許庁が特許情報に関して通知するもの」であることに間違いはないので、
広い意味では、「公開特許公報」と「特許掲載公報」のどちらも「特許公報」と呼ぶことができますが、
狭義では、「特許掲載公報」のことを「特許公報」と呼びます。

特許用語として「特許公報」が登場した場合には、
「特許掲載公報」のことを指していることがよくあるので、
覚えておいていただくと良いかと思います。

ここに注意!!

「公開特許公報にウチの技術と同じようなものが載っていました。
ウチ、この会社さんの特許権侵害に該当してしまいませんかね?大丈夫でしょうか?」
という問い合わせをよくいただきます。

しかし上述のとおり、
「公開特許公報」には出願内容が、「特許掲載公報」には登録情報が、
掲載されています。

つまり、「公開特許公報」に載っている=権利化されている、とは限らないのです。

特許出願しても、出願中で権利の内容が確定していないもの、
出願人自ら権利化することをあきらめたり、
特許庁の審査をパスできず拒絶されて不登録が確定している場合もあります。

「公開特許公報」に掲載されているからと言って、
直ちに、特許権侵害になるということではありません。

「公開特許公報」に自社の技術と同様のものが掲載されている場合には、
まず落ち着いて、その出願が現状どのような状況であるのかを調べることが必要です。

対して、「特許掲載公報」(特許公報とも呼ばれる)には、
登録された特許の情報が記載されていますので、
こちらの内容と自社の技術が重複している場合は、注意が必要です。

ただし、この場合も、特許権者が途中で特許料を納めずに権利が消滅している場合や、
異議申し立てや審判により権利範囲が変更されている場合もあります。

「特許掲載公報」に自社の技術と同様のものが掲載されている場合にも、
同様にその特許が現状有効かを調べることが必要です。

特許公報を閲覧する方法

特許庁は、急速な情報流通環境の変化に伴い、
事務手続きを含めて、管轄業務の電子化を推し進めています。

「特許行政年次報告書2020年版」によると、
特許・実用新案が98.6%、意匠が93.2%、商標が83.8%(2019年)という高い電子出願率を達成しており、
今後もさらに電子化が浸透するものと予想されます。

現在「特許公報」は、情報流通環境の変化に伴い、インターネットによって閲覧するように整備されています。

特許庁の「インターネット利用による公報発行サイト」にアクセスすると、
最新の特許公報をダウンロードできるので、最新の特許公報を、素早く手軽に閲覧することが可能となっています。

インターネット閲覧の運用前に、紙媒体で発行されていた特許公報については、
特許庁の公報閲覧室で閲覧することが可能ですが、閲覧前に事前申請が必要であるなどの手間がかかります。

一部の特許情報を除いては、特許情報プラットフォームJ-PlatPatにアクセスすることでも閲覧できるので、
過去の特許公報についてもインターネットを活用して閲覧すると良いでしょう 。

 

■J-PlatPatによる特許公報の検索方法

(1)「特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」」の上部特許・実用新案の中の、
   「特許・実用新案番号照会/OPD」をクリック。


                              (特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」より)

(2)「種別番号」の枠で、下記どちらかを選択後、
     公開番号または、特許番号を入力し、「照会」ボタンをクリックすると、
     該当する特許公報を閲覧できます。

     ~種別番号の選択~
     公開特許公報を検索したい場合:
     下記図の青枠の様に、「公開番号・公表番号(A)」を選択します。
    「番号」には、公開番号(「YYYY(西暦)-7桁の数字」)を入力します。

     特許掲載公報を検索したい場合:
     下記図の赤枠の様に、「特許番号(B)・特許発明明細書番号(C)」を選択します。
    「番号」には、特許番号(7桁の数字)を入力します。


                             (特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」より)

まとめ

混同されやすいこれらの公報ですが、
最近または過去にどのような特許出願がされたのか、どの様な技術が特許登録されたのか、
など、役立つ情報を得ることができます。

是非、一度ご覧になってみてください。

・「特許公報」とは、広義では、特許庁が発行する公報のことを指す
・「公開特許公報」には、特許出願から約1年半後に公開された、出願情報が掲載されている
・「特許掲載公報」は、「特許公報」というタイトルで発行され、権利化された特許情報が掲載されている