目次
「新しいアイデアを思いついたものの、まだ試作品の段階です。
ただ、このアイデアについて模倣されたくはないので、
特許出願できればと考えています。」
「新規技術を用いる予定であるものの、まだ完成はしていません。
このような未完成の新商品についても、特許出願はできるのでしょうか?」
今回はこのような、
「試作品や未完成の新商品に用いられている技術(アイデア)
についての特許出願をした場合に、権利化を図れるのか」
という疑問に答えていきたいと思います。
明細書の記載要件とは?
先ほどの疑問に答えるにあたり、
『明細書の記載要件(特許法36条4項1号)』
というものを気にしなければいけません。
この、『明細書の記載要件(特許法36条4項1号)』は、
当業者が発明の実施をできる程度に、
明確かつ十分な明細書の記載を要求する規定です。
特許出願をしたいと考える技術(アイデア)が、
従来存在しないものであり(新規性を有し)、どんなに優れた(進歩性を有する)ものであっても、
上記の『明細書の記載要件(特許法36条4項1号)』を満たさないと、
特許出願をしても権利化を図ることができません。
では、試作品や未完成の製品であっても、
『明細書の記載要件(特許法36条4項)』を満たすことができるのかを説明したいと思います。
試作品や、未完成の製品でも、明細書の記載要件を満たすことができる?!
結論からいいますと、
試作品や未完成の新商品でも、明細書の記載要件を満たす場合があります!!
つまり、
試作品や未完成の新商品でも、特許出願できる場合がある、
ということです。
具体的には、試作品や未完成の新商品であっても、
特許出願を希望する新規技術(新しいアイデア)のコンセプト・メリットをはっきりと示せれば、
出願に足る明細書の記載とすることができます。
というのも、明細書をみた当業者が、
特許出願を希望する新規技術(新しいアイデア)を含む製品を作れ、
使用できると理解できる程度の記載であれば、
『明細書の記載要件(特許法36条4項)』を満たすといえます。
例えば日用品の場合、試作品であっても、
その試作品を基に同様のコンセプトの製品を作れ、使用できることを、
当業者であれば理解できます。
また、洗剤や香水などの化学製品の場合、
未完成であっても、実験等により新規技術(新しいアイデア)に基づくメリットを示し、
おおよその製造手順が開示されていれば、その実験結果を基に同様の製品を作れ、使用できることを、
当業者であれば理解できます。
このように、試作品や未完成の新商品であっても、
その新規技術(新しいアイデア)を用いた製品を作れ、使用できることを当業者が理解できれば、
『明細書の記載要件(特許法36条4項1号)』を満たす明細書を記載することができる場合があります 。
■権利化できないケースもあるので注意!!
もちろん、残念ながら未完成の発明で特許権利化できないケースもあります。
例えば、以下の様なケースです。
・「こうしたい!」という漠然とした願望があるだけで、
具体的にどのように解決していいかわからない、
現実的な設計のアイディア例もない。
・具体的なアイディアはあるが、技術的に実行不可能、
または、解決できない重大な問題がある。
明細書に、抽象的な内容しか記載できず、
「どのように実現するのか」の設計例等がない場合には、
当業者が明細書を見ても実施ができないとされて、
拒絶される可能性が非常に高いので、注意が必要です。
まとめ
先願主義を採用している日本では、なるべく早く出願することが大切です。
すなわち、試作品や未完成の新商品であっても特許出願を検討することが、
有効な知財戦略のためにはとても重要です。
なお、『明細書の記載要件(特許法36条4項)』を満たすか否かの判断には、
専門的な分析が必要なこともあります。
そのため、貴社の試作品や未完成の新商品で権利化できるのか否かの判断については、
弁理士や、特許事務所等にお気軽にご相談ください。
・試作品や未完成の新商品でも、特許の権利化できる場合がある
・特許出願をして権利化を図るには、『明細書の記載要件(特許法36条4項1号)』を満たす必要がある
・権利化できるかどうかの判断に少しでも迷ったら、専門家に相談を