「特許取得したい!」と思っても、特許出願後に審査請求をしてから、通常約9.5か月待たなければなりません。
特許取得を急いでいる方は特に、困ってしまいますよね。

今回は、そんなお困りごとをもしかしたら解決できるかもしれない、
早期審査制度」について解説いたします。

特許出願~権利化までの流れ

まずは、早期審査制度について解説する前に、
特許出願~権利化までの流れを簡単にご説明いたします。

特許を権利化するためには、
特許出願後3年以内に、審査請求をする必要があります。

審査請求をすると、順次審査が開始され、
特許庁より最初の審査結果である、登録査定または拒絶理由通知が届きます 。

この、最初の審査結果が届くまでに、通常約9.5か月(2019年)も待つ必要があるのが、現状です。

「登録査定」の場合は、登録料を納めれば、晴れて登録となります。

しかし、「拒絶理由通知」の場合は、意見書や補正書によって応答することで、再度審査が行われます。
この結果、「登録」となる場合もあれば、「拒絶査定」となってしまう場合もあります。

これが、特許出願~権利化までの簡単な流れです。

早期審査とは

では、ここから、本題に入っていきましょう。
まず、「早期審査制度」とは、
審査請求後最初の審査結果を受け取るまでの期間を短縮できる制度です。

上述の通り、特許出願から3年以内に審査請求を行うことで、
審査が開始され、その後、特許庁より最初の審査結果が届きます。

審査請求~最初の審査結果が届くまでの期間は、平均9.5か月(2019年)であると、
「特許行政年次報告書2020年版」では報告されています。

しかし、早期審査制度を活用することで、
この期間を平均2.5か月(2019年)に短縮することができます。
(「特許庁ステータスレポート2020」より)

平均9.5か月が平均2.5か月にまで短縮できたら、約7か月ですから、かなりの期間短縮ですよね。

しかし、早期審査制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
以下、その条件について解説いたします。

早期審査を受ける為の条件とは

図1に示す出願が、早期審査の対象であり、申請が可能です。

中小企業個人大学公的研究機関TLOによる出願であれば申請できますが、
中堅企業・大企業の場合は、条件に一致するか確認が必要です。

なお、早期審査の申請では、特許庁に対しての費用は掛かりませんが、
特許事務所などに依頼する場合、基本的に手数料が発生します。

【図1】早期審査の対象となる出願

早期審査の活用法とは

前述したように、早期審査のメリットは、審査期間を短縮し、通常より早く権利取得できる点です。
では、どのような場面において、権利化を急ぐべきなのでしょうか。

例えば、以下のような場合が考えられます。

■出願した発明を他社が実施している場合(権利侵害が疑われる場合)
特許が権利化されていない状態では、差し止め請求や損害賠償請求を行えません。

■特許登録済みの製品・サービスとして営業などに利用したい場合
特許登録されることで、技術力・開発力の高さをアピールすることができます。

■市場における優位性の確保
特許が権利化されることで、他社が市場に参入する障壁となります。

■外国出願を検討している場合
日本の特許出願を基礎として、パリ優先権を主張して外国出願する場合、
日本の出願から1年以内に申請する必要があります。
早期審査を活用することで、日本での審査結果を踏まえて、外国出願を検討することができます。

関連記事:日本で取得した特許権は海外でも有効?

■審査結果に応じて対応を検討したい場合
審査の結果、出願時の内容では権利化が難しいと判断される場合、
出願から1年以内であれば、優先権を主張することで、内容を追加して新たな出願として出し直すことが可能です。
この場合、追加部分の内容は後の出願日を基準に審査され、
先の出願時から記載していた内容は、先の出願日を基準に審査されます。

また、内容を追加することも難しい場合、1年4か月以内に出願を取り下げることで、
1年半後の出願公開を防ぐことができます。

【図2】早期審査の活用について

スーパー早期審査について

早期審査より更に審査期間を短縮できる、「スーパー早期審査」という制度もあります。
(審査期間平均0.6か月(2019年))

スーパー早期審査の対象となる出願は、
「実施関連出願」かつ「外国関連出願」であること
又はベンチャー企業による出願であって「実施関連出願」であること
の何れかに該当する必要があります。

また、申請前4週間の手続きすべてをオンラインで申請する必要があります。

早期審査のデメリット

特許の権利範囲が確定することで、権利範囲を回避して模倣しようとする他社の動きも、
早くなることが予測されます。

特許出願による牽制効果を狙う場合、権利範囲を確定させない方がよい場合もあります。

なお、「分割出願」を併せて活用することで、権利範囲が確定しない特許出願を維持することが可能なため、
上記のデメリットを解消できる可能性があります。

ご紹介しました活用事例を踏まえて、早期審査スーパー早期審査を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、その際には、一度、弁理士にご相談されてみても良いかもしれません。

関連記事:特許の分割出願とは?

まとめ

・早期審査制度とは、審査期間を平均2.5か月(2019年)まで短縮できる制度。
・早期審査制度の利用には、いくつかの条件を満たす必要がある。
・スーパー早期審査制度とは、審査期間を平均0.6か月(2019年)まで短縮できる制度。
・スーパー早期審査制度の利用には、いくつかの条件を満たす必要がある。
・早期審査にはデメリットもある。