特許権プールとは

特許権プールとは、特定の技術に関連する特許権を所有する企業や研究機関が、共同で設立した会社等の中立団体にそれぞれの特許権を集めて、集めた特許権について当該中立団体の構成員や他社にライセンスを与える仕組みをいいます(図1)。そして、この中立団体が、集めた特許権に関するライセンス関連の契約と金銭の流れについて一括管理することで、ライセンス契約に関する事務負担を軽減するというメリットがあります。

現在、特許権プールとして知られているものとしては、MPEGやDVDの規格に関するもの等が知られており、画像や音声、通信の分野で使用される傾向があります。また、最近ではコロナウイルス対策に関するワクチンや治療薬について特許権プールを活用しようとする動きもあります。

 

図1.特許権プールのイメージ

 

特許権プールの活用方法

価値ある技術、特に、標準化、規格化に係る技術については、ライセンシーとして利用したいと考える企業が多数にわたる場合があります。このような場合ライセンサー企業の立場にたって考えてみると、ライセンサー企業がライセンシー企業の発掘、各ライセンシー企業と個別に条件の交渉、契約書の作成、実施数量の監査、ロイヤルティフィーの徴収を行うことは大きな事務負担コストが伴い、実質的なロイヤルティ収入の低減に繋がります。

一方、製品の中には多数の技術が使われており、これらの技術には複数企業における多数の特許権が関与していることもあります。ライセンシー企業の立場にたって考えてみると、ライセンシー企業は各ライセンサー企業(特許権者)との条件の交渉、契約書の作成、実施数量の報告、ロイヤルティフィーの支払い等を個別に支払うことは大きな事務負担コストが伴い、結果として技術導入コストが高くなる要因となります。

特許権プールを活用することで、このような事務負担の一切を中立団体が引き受けるため、ライセンサー企業及びライセンシー企業の事務負担が大幅に低減されるメリットがあります。

また、特許権プールが形成されると、その技術標準・規格に対応した製品が複数の企業から市場に供給され、急速に普及し、市場拡大効果が期待できます。この効果は、ライセンサ企業にとってはライセンス収入の増大、ライセンシー企業にとっては売上の増大が期待され、何れにとってもメリットとなります。

一方で、デメリットとしては、特許権プールを活用した場合における各ライセンサー企業が受け取ることができるロイヤリティ収入は、ライセンサー企業が個別にライセンシー企業とライセンス契約を結ぶ場合と比して、相対的に低くなります。

したがって、自社が保有する技術のうち、どこまでを特許権プールに供出し、どこまでを自社で独占するかについて、十分に留意する必要があります。

 

まとめ

特許権プールを活用することで、ライセンス契約が簡素化されるというメリットがあり、特に標準化、規格化に関する技術については、急速な市場効果が見込まれます。弊所のような特許事務所では、特許権の活用まで見据えた特許戦略のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。