「アドパス」とは何か

アドパスとは、AI(人工知能)を活用して世界中の特許文献を検索できるシステムとその管理システムの組み合わせを有するシステムです。特許庁が自ら開発し、2020年4月に特許権を取得しました(特許第6691280号)。

本特許権の取得は、①自ら開発した特許文献検索システムを安定的に自己実施できるようにすること、②国内ユーザーや諸外国の特許庁等に広く安心してこの特許技術を活用頂くことを目的としていることが明かされています。

 

「アドパス」の機能

アドパスの特徴は、世界中の特許文献を言語や分類形式にかかわらず、任意の言語と分類による一括検索を実現する点にあります。

特許文献の分類形式に関しては、国際的に統一されている分類として、国際特許分類(IPC)による分類があるものの、IPCには細かい分類がないため、IPCと独自の分類形式を併用している国もあります。例えば、日本では、FIやFタームと呼ばれる日本独自の分類をIPCと併用しており、アメリカでは、IPCと米国特許分類(USC)と呼ばれる独自の分類記号を用いています。そのため、従来の文献検索システムでは、世界中の特許文献をこれらの独自の分類形式に基づいて一括検索をすることができませんでした。

今回特許権を取得したアドパスでは、学習モデル(AI)を用いて出願書類に記載されている発明の内容に基づく特許文献の分類情報を生成し、この生成した分類情報に基づいて世界中の特許文献の一括検索を可能にしています。出願書類に記載されている発明の内容が外国語で記載されている場合であっても、この発明の内容の翻訳文に基づいて特許分類の分類情報を生成することが可能です。

発明の新規性や進歩性を審査する際に必要な文献調査は、複数の分類形式を組み合わせることで行われることが多いため、このような一括検索が可能になることで、特許庁の審査をより効率的に行うことが可能になります。

この「アドパス」が、個人、民間企業、特許事務所等が利用できるようになるのかは定かではありません。もし、誰でもアドパスを利用できるようになれば、より効率的に、かつ精度の高い技術動向調査、先行技術調査、侵害防止調査等が行えるようになります。

 

まとめ

アドパスが誰にでも利用できるようになることで、コストが嵩みやすい外国特許文献の調査も、低コストで実現できるようになるかもしれません。

しかし、特許文献の記載内容は独特なものが多く、普段特許文献に触れる機会が無い方が内容を正確に把握するのは難しい場合が多く、内容を読み違えて他社の特許権に抵触してしまう、又は自社の特許権の取得を邪魔する引用文献となってしまうことも珍しくありません。

独自に特許文献を探し出したものの、その読み方がわからない、内容を正確に把握できているか確認したい場合には、是非専門家である弁理士にご相談ください。