はじめに

今回、意匠法において大きな改正がありました。今回のコラムでは、2020年4月1日に施行された主な変更点について説明いたします。

 

保護対象の拡充

従来、意匠法の保護対象は、「物品」、すなわち有体物である動産に限定されていました。

しかし、空間のデザインを重視する観点から、「建築物」「内装」についても新たに保護対象とする改正がなされました。

また、インターネットサービスの多様化やスマートフォンの飛躍的普及に対応するため、「画像」についても新たに保護対象とする改正がなされました。

 

意匠権の存続期間

従来の意匠法では、意匠権の存続期間は、登録日から20年で満了すると規定されていましたが、今回の意匠法の改正で、意匠権の存続期間は、出願日から25年で満了すると改正されました。

製品開発段階で意匠登録出願をし、時間をかけて改良を重ねた後に製品を市場に出す場合が多くあります。

しかし、航空機や自動車など開発に時間のかかる分野では、実際に製品を市場に出す頃には意匠権の存続期間が満了してしまうということがあり、存続期間の延長を求めるニーズがあったためです。

 

関連意匠制度の拡充

従来から、意匠法では、一つのデザインコンセプトから創作された複数の意匠を保護するために、一の意匠(本意匠)に類似する意匠を関連意匠として登録することが可能でした。

しかし、従来の意匠法では、本意匠の意匠公報発行前までしか関連意匠を登録することはできませんでした。

また、関連意匠のみに類似し、本意匠に類似していない意匠を関連意匠として登録することはできませんでした。

今回の改正では、本意匠の出願から10年以内であれば、本意匠の意匠公報発行後であっても本意匠に類似する関連意匠の登録が認められることになりました。

また、本意匠には類似せず、関連意匠にのみ類似する意匠についても、関連意匠として登録を認めることとしました。
なお、関連意匠の意匠権の存続期間の満了日は、本意匠の出願日から25年です。

組物の意匠の拡充

従来の意匠法では、組物の部分意匠は認められていませんでした。

しかし、物品の一部に特徴的なデザインを施したものについて、組物の部分意匠による保護を認めてほしいとの要望があり、今回の改正で組物の部分意匠についても登録を認めることになりました。

また、今回の法改正で新たに保護対象となる建築物や画像についても、組物の意匠としての出願が認められます。

 

間接侵害の対象拡大

従来の意匠法では、意匠権を侵害する物品を分割して製造・輸入等する行為は間接侵害に該当しませんでしたが、今回の改正でこれらの行為が間接侵害に該当することになりました。

 

創作非容易性の水準の明確化

従来の意匠法では、公然知られたものに基づいて容易に創作することができる意匠には権利が認められないとされていました。

今回の改正では、公然知られたものの他、刊行物やインターネット上で公開されたものに基づいて容易に創作することができる意匠にも権利が認められないことが明記され、創作非容易性の水準が明確化されました。

 

損害賠償算定方法の見直し

意匠権を侵害された場合には、損害賠償請求をすることができます。

従来の意匠法では、侵害者が得た利益のうち、権利者の生産・販売能力等を超える部分の利益については、損害賠償請求はできませんでした。

しかし、今回の改正により、侵害者が得た利益のうち、権利者の生産・販売能力を超える部分の利益についても、損害賠償請求が認められるようになりました。