商品やサービスのライフサイクルが短命になった現代では、もはや一企業が単独で市場シェアを確保することは困難でしょう。

そこで盛んにおこなわれるようになったのが「共同開発」です。

ここでは共同開発の特徴やメリットを解説しましょう。

 

≪共同開発とは?≫

共同開発とは、複数の企業や団体が共同で新製品や新技術を開発することです。

企業同士がそれぞれに持つ強みを活かし、相互に持つ技術を提供しあったり、一方は技術を、もう一方は人材を提供したりといった形で目標達成を目指します。

2019年には、自動車業界最大手のトヨタ自動車と前輪駆動にかけては業界随一の評価を受けているスバルが共同開発によって電気自動車専用のプラットフォームを共同開発するというニュースが流れました。

2020年に入ってからは、医薬品メーカーのエーザイと米国のバイオベンチャー企業がガン遺伝子パネル検査の共同開発に向けて契約を結んだというニュースも話題になりました。

それぞれの企業が独自に開発をおこなっているのでは到達できない技術に一足飛びで追いつく方策としては実に効率が良く飛躍的な方法です。

共同開発は、このように同じ業界内で競合関係にある企業同士が手を結ぶケースのほか、異業種間で協力関係を築くことで新たなイノベーションを引き起こすケースも多くあります。

 

≪共同開発が持つ特徴≫

近年になり、共同開発を採用する企業が増えています。

先に例に挙げた業界最大手の企業間によるものばかりではなく、大手企業とベンチャー企業や大学などの研究機関といったペアリングでおこなわれるケースも珍しくありません。

技術的に目覚ましい革新を遂げている現代では、企業単独の研究のみでは新たなイノベーションを起こすのは困難だといえます。

研究・開発にかかる時間やコストは膨大になり、他の分野の技術を導入しないと前進しないことも多いため、その現状の打開策として共同開発が積極的に採用されている傾向があります。

つまり共同開発は、研究・開発の時間短縮とコスト削減および異業種間での技術的な相互補完という基本的な目的を持っているといえるでしょう。

 

≪共同開発のメリット≫

共同開発をおこなうことは、共同関係にある企業や団体にとって大きなメリットをもたらします。

まず開発の速度を急激に早めることができる点です。

個別の企業がそれぞれ開発していても、新たなイノベーションを起こすためには多大な時間を要します。

共同開発によって、各社が技術や人材を持ち寄ることで開発の速度は急激にアップするのです。

商品やサービスのライフサイクルが短命である現代では、素早い開発こそがビジネスチャンスを広げる武器となります。

開発にかかるコスト負担を分散できるのも大きなメリットのひとつです。

商品やサービスの開発に多大なコストがかかるのはご承知のとおりでしょう。

たとえ素晴らしい技術を実現できる構想があったとしても、コスト不足で断念せざるを得ない事例は山のようにあるのです。

共同開発では、複数の企業や団体が開発にかかるコストを分担することになるため、1社あたりのコスト負担は軽減されます。

費用の負担割合は均等である必要はなく、たとえば資金援助的な立場で共同開発相手をみつけることができればコスト不足で実現を断念していた商品やサービスに着手できるようにもなるでしょう。

また、開発が失敗に終わった場合でも、コストを分担しているためダメージは分散されます。

リスク分散の選択肢としても非常に有効です。

最後に、共同開発によって生み出された知的財産の権利者になれることにも注目しておきたいところでしょう。

共同開発では、共同開発者がそれぞれ権利者として実施権を得ます。

開発への貢献度などに応じて利益を配分するため1社が独自に開発した場合と比べると収益は低くなりますが、独立して実施権を得ることはビジネスに大いに活用できるでしょう。

 

≪共同開発を始める前に特許事務所に相談を!≫

共同開発には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのリスクも負うことになります。

極端に不利な条件であることに気づかないまま共同開発契約を結んでいると、共同開発は単に「都合よく使われただけ」になってしまうことにもなりかねません。

とくに、近年では企業と大学が共同開発をすすめて発明を生み出す事例も多く、費用負担の面や特許権者が誰になるのかなどでトラブルが散見されます。

大学は研究に力を注ぐ時間的・人的な余裕がありますが、反面、商品の製造や販売に関するノウハウや能力がないため、共同開発してもその後の利益を確保する方法を持ちません。

多くの場合、大学側に実施料または不実施補償といった名目で金銭が支払われることになりますが、思わぬ多額の利益が発生した場合などではトラブルになりやすいでしょう。

また、企業間の共同開発でも、一方に不利な条件になっていたり、対等な条件でも一方だけが巨額の利益に結びついたりといったケースはめずらしくありません。

共同開発では、つねに相手との良好な関係を維持することに注力しなくてはいけないので、知的財産の知識や知財ビジネスの専門家にアドバイスを請うべきです。

共同開発の話が持ち上がったら、社内での検討と並行して特許事務所に相談するのがベストでしょう。

弁理士は知的財産権のスペシャリストなので、共同開発契約書の内容をチェックしてもらうと同時に共同開発が真に利益がある方策であるのかを判断してもらうのがベストです。

他社から共同開発の打診を受けた場合でも、安易に飛びつかず弁理士のアドバイスを受けましょう。