特許の権利化がスタートするのは『アイデア』が誕生した瞬間でしょう。

たしかにそれは間違っていません。

しかし「画期的なアイデアであれば特許権が認められる」というわけではありません。

ここでは「技術のアイデアは特許で保護できるのか」について触れていきましょう。

 

≪特許権と『アイデア』の関係≫

 

特許権はアイデアを保護するものです。

特許権についてごく簡単に説明するのであれば、この説明は間違いではありません。

ただし、アイデアを思いつけばそれが保護されるというものでもありません。

アイデアを日本語に訳すと「着想」や「ものごとの中核となる考え」といった意味になります。

要は頭の中で思い浮かべればそれはアイデアと呼ぶことができます。

しかし、ただ「こんなことができるかもしれない」といったひらめきにまで権利が与えられるのではなく、アイデアが実現可能なものでないと特許権は与えられません。

どんなに素晴らしい技術を頭の中でひらめいたとしても、それでは特許権を得ることはできないのです。

 

≪自然法則を利用した技術的アイデアが保護される≫

 

アイデアが特許権で保護されるためには、アイデアが「自然法則を利用したもの」であることが求められます。

たとえば、誰かが新しいスポーツを考案したとします。

単純明快なのにゲーム性が高く、瞬く間に世界中で競技されるであろう内容です。

しかし、スポーツのルールはいくらアイデアに基づいて作られたものであっても自然法則を利用したものではなく、単に人為的な取り決めであるにすぎず、特許権の対象とはなりません。

代表的な事例として「偉人カレンダー事件」という例があります。

カレンダーとは毎日チェックするものですから、ここに世界の偉人の業績などを表記することで自然と偉人の思想・発想が身に付くというアイデアについて特許権の取得を目指し出願されましたが、特許庁がこれを認めなかったという事例です。

これ自体はたしかに良いアイデアかもしれませんが、カレンダーをみた人が偉人の思想は発想を習得するのは人間の心理現象である認識や記憶に頼っただけで、自然法則を利用しているとはいえません。

偉人カレンダーは単なる紙媒体に情報を掲載しているだけに過ぎず、技術的なアイデアだとは評価できないわけです。

 

≪アイデアの新規性が求められる≫

 

技術のアイデアで特許権の取得を目指す場合、必ず『新規性』が求められます。

新規性とは、出願されるまでそのアイデアを誰も知らなかったという場合に認められます。

既知・公知の技術では、たとえこれまでに特許権の出願に至っていないものであっても権利化は認められません。

この点は、すでに広く利用されている技術をわざわざ特許として出願しても、間違いなく権利化には至らないことはご承知のとおりでしょう。

ところが、思わぬところで新規性を失っているケースがあることにも注意が必要です。

たとえば、出願の前に業界紙などで論文を公表していたり、展示会などで先行発表していたりするケース、製品としてすでに販売しているものを「実は特殊な技術を利用している」と特許を出願したケースなどでは、特許権が認められないのです。

 

≪アイデアの進歩性も求められる≫

 

いくらそれまでに公表されていなくて、誰も特許権を取得していないアイデアであっても『進歩性』がないと特許権は認められません。

特許権が認められるためには、技術の革新的な進歩が求められます。

既存の技術をそのまま利用、または若干の応用を加えれば実現できる程度のアイデアでは進歩性があるとはいえません。

また、専門家であれば容易にその技術にたどり着くであろうアイデアも進歩性がないと判断されません。

特許権がアイデアに進歩性を求めるのは、飛躍的な技術革新を期待するからです。

小さな応用を思いつくたびに権利を保護されていては、特許法が掲げる「産業の発展に寄与する」という大目的を達成できないのです。

 

 

≪技術のアイデアを特許で保護するなら特許事務所に相談を!≫

 

いまだ他社が特許権を取得していない技術のアイデアを思い付いたのであれば、やはり特許権取得にチャレンジしてビジネスに活かしたいところでしょう。

ただし、技術のアイデアが特許権を得られるか否かには、自然法則を利用したものであるかの判断や、新規性・進歩性があるのかという条件も充足している必要があります。

単に技術のアイデアを思い付いたという程度で特許権を出願していれば、出願にかかる労力やコストだけでも大きく疲弊してしまうことは必至です。

技術のアイデアを特許権で保護したいと考えるのであれば、まずは特許事務所に相談し、弁理士のアドバイスを受けるのが賢明です。

弁理士は特許権が認められる要件や拒絶されるケースなどに精通しているため、そのアイデアが実際に特許権を取得できるものなのか否かを客観的に判定できます。

また、現状では特許権の取得は難しいとしても、取得を目指した改良や出願方法についても教示を受けることが期待できるでしょう。