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特許権の取得は市場シェアの独占・拡大につながり、企業の利益に寄与します。
特に医療分野においてはその傾向が著しく強く、ひとつの発明によって中小のベンチャー企業が大きく発展することにつながる事例も珍しくありません。
では、医療機器の開発について特許権を申請する際にはどのような点に留意しておくべきなのでしょうか?
医療機器開発の特許申請に関する基本的な知識について解説します。
≪医療行為にあたらないことが要件≫
まず認識が必要なのが、革新的でいまだ発見されていない医療分野の発明であれば医療機器としての特許権が取得できる、というわけではないことです。
実は「人間を手術・治療・診断する方法の発明」は、特許権によっては保護されません。
簡単に表現すると、医療行為は特許権の対象にならないのです。
これは、医療とは広く人命を救うために開放されるべきであるという人道的な意図が大前提にあるためです。
また、特許権侵害のおそれを認識したまま医師に治療にあたらせる行為は不当であるという見解があることも理由となっています。
この見解に基づくと、医療行為は特許権の大目的である「産業の発展への寄与」が達成できないため、特許権による保護を受けられないのです。
≪医療機器を特許権で保護する方法は2とおり≫
原則的に医療行為は特許権の保護対象とはなり得ません。
では、医療機器はどのような方法で権利を保護していけばよいのでしょうか?
医療機器を特許権で保護する方法は2とおりのパターンが考えられます。
まずは「医療機器自体で特許権を取得する」ことです。
単純に物としての発明であれば特許権による保護を受けることができます。
たとえば、内視鏡分野では世界の特許の7割をオリンパス社が所有していますが、スコープ、ライトなど各部に多数の特許技術が使用されており、物としての発明で特許権を取得しています。
もう一方の方法は「方法の発明で特許権を取得する」ことです。
医療機器を特許権で保護する方法としては、こちらのほうが有益である場合が多いのが実情でしょう。
わかりやすい例では『CT』が挙げられます。
ご存知のとおり、CTは人体にX線を照射してデータを測定し、コンピューターによって人体の断面像を構築する装置です。
この場合、CTは「X線を照射する」という機器自体に備わっている機能のみに焦点を当てることで、作動方法として表現したものであり医療行為であるとはいえないと解することができます。
同じように例示されるのがマイクロ手術ロボットシステムです。
マイクロ手術ロボットシステムは、困難な手術を補助するための医療機器ではありますが、ここでは医師の存在を排除して考えます。
すると「マニピュレーターから受信した操作信号によってロボットが作動する」という作動方法のみに焦点を当てることができるので、方法の発明として特許権を取得することが可能になるのです。
≪医療機器の特許申請で重要なことは?≫
医療機器の特許申請においては「方法の発明」として解釈する理論構築が必要となります。
先ほどの事例でいえば、まずCTは単にX線を照射するという点だけに焦点を当てることで方法の発明ということができますが、人体への照射工程を含んでしまうと「人体に対する作用工程」が含まれてしまうため医療行為とみなされ特許権の保護対象外となってしまいます。
同じくマイクロ手術ロボットシステムでいえば、ロボットの作動方法だけに焦点を当てることで特許権の対象となりますが、ここに「医師が処置をおこなうために操作する工程」を含んでしまうことで対象外となります。
本来的には同じ技術的思想に基づくものではありますが「方法の発明の説明」と「工程を含む説明」という表現の違いによって特許権の保護対象となり得るか、対象外となるかの差が生じるわけです。
医療機器の特許申請においては、このように「表現次第」という側面があります。
医療機器の特許取得を目指すのであれば、医療分野に特有の攻め方があることを十分に理解している弁理士が所属している特許事務所に依頼するのがベストです。
医療機器の特許取得の経験が豊富で、特許申請において様々な角度の解釈を用いることができる事務所に依頼することが、特許取得のカギとなるでしょう。