自社の商品が他社の特許権や商標権を侵害してしまうと、大きなダメージを被ることになります。

販売中の商品の回収、権利者への賠償、侵害行為に対する社会的な謝罪など、手間と費用がかかることばかり。

だからこそ、自社商品をリリースする際には「他社の知的財産を侵害していないか?」に細心の注意を払うはずです。

しかし、リリース前に社内で他社商品との比較や他社が持つ知的財産の情報を集めて徹底的に調査をしていたとしても、やはり侵害を訴えられることもあります。

ここでは、自社商品が他社の特許権や商標権などを侵害していないかどうかを確認する方法を解説します。

 

≪侵害を確認するのに有効な『鑑定』≫

 

自社商品が他社の知的財産を侵害していないかを自社のチェック機能だけで確認するには限界があります。

知的財産の分野は法令が難しいだけでなく権利の解釈が難しい側面もあるため、深い見識と豊富な経験が必須となるからです。

そこで登場する方法が『鑑定』です。

 

鑑定とは、知的財産の専門家である弁理士によって、対象となる商品が他社の知的財産を侵害していないかをチェックすることです。

鑑定には種類があり、おもに他社の知的財産を侵害していないかを判断する『侵害鑑定』と、自社の知的財産について先行する技術などがないかを調査する『有効性鑑定』の2つがありますが、ここで有効なのは侵害鑑定です。

特許権における侵害鑑定では、他社が保有する特許権と、自社の商品とを比較し、侵害が存在するかを判定します。

商標権における侵害鑑定では、対象の商標が登録商標と同一または類似のものでないか、使用商品が指定役務に類似しているか否かを判定します。

 

弁理士による鑑定は、必ずしも依頼者の希望どおりの回答が得られるわけではありません。

公平・中立の立場で侵害の成否を判断するため、恣意的な回答を得られるわけではないのです。

しかし「貴社の商品は侵害にあたるおそれがある」とはっきり回答を得ることができれば、対策を講じる余裕が生まれます。

実際に他社から侵害を指摘される前に修正することで、労力や費用を節約することもできるでしょう。

 

≪特許庁に見解を求める『判定』≫

 

弁理士による鑑定は、専門的な見地に立っておこなわれるものであり信頼性は高いものですが、あくまでも鑑定を依頼された弁理士において判断されるものであり、必ずしも自社商品の知的財産権を保証するものではありません。

そこで、鑑定よりもさらに確度が高い判断を要求するのであれば、特許庁による『判定』を利用するのも有効です。

 

判定とは、特許庁がおこなう行政サービスのひとつです。

対象の商品が特許権や商標権を侵害するものでないかを特許庁が判定するもので、公平・中立な立場の回答を得ることができます。

判定の結論は最短で3ヶ月程度で下されるうえに、費用も1件につき4万円と少額での利用が可能です。

 

判定が優れているところは、事実上は特許庁の審理と同じ効力があるという点です。

判定によって侵害が生じていないことが担保できれば、他社からの侵害を訴えられる懸念は払拭できるし、仮に他社から侵害を訴えられても判定結果を示して抗弁することが可能です。

他社から侵害を訴えられた場合には交渉・訴訟に多大な時間・労力・費用を要するため、これを前もって回避する手段を持つことができるという意味でも大きなメリットとなるでしょう。

 

≪侵害の有無を確認するにはまず特許事務所へ相談を≫

 

自社商品が他社の知的財産権を侵害しているか否かを知るためには、まず特許事務所に相談することをおすすめします。

特許事務所に相談することでまずは侵害鑑定をおこなうことになりますが、侵害鑑定によっても不安が払拭できない、さらに強力な担保が欲しいと判断するのであれば特許庁における判定をおこなうことにもなるでしょう。

ただし、判定の申請には対象となる知的財産の説明書などを添付する必要があり、実効ある判定のためには内容を充足した説明書の作成が必須となります。

また、特許庁に対する判定の申請の手間もあります。

これらを一括して任せることができるため、判定を利用する際にも弁理士のサポートは不可欠でしょう。