爆発的に普及しているスマートフォンやタブレットなどは、1機の端末に数多くの海外特許が埋め込まれています。

製品の製造・販売のグローバル化が目立つ昨今では、海外企業とのライセンス契約を締結する場面も増えてきたため、企業の大小を問わず海外企業とのライセンス契約についての知識を固めておくべきでしょう。

ここでは海外企業とのライセンス契約をおこなう際の留意点について紹介します。

 

ライセンシーの選定が重要

海外企業とのライセンス契約を締結する場合で、自身がライセンサー、海外企業がライセンシーとなるケースでは、特にライセンシーの選定に注意を払う必要があります。

海外企業とのライセンス契約における失敗事例として非常に多いのが「契約更新をせずにノウハウだけを奪われてしまった」というケースです。

海外進出を目指す国内企業が現地法人を設けるよりも手軽で、フランチャイズ契約よりも面倒がないとライセンス契約に至ることがありますが、ライセンシーの目的がノウハウの奪取だとすれば、契約期間が満了するや看板を変えてノウハウを得た別の企業として稼働を始めてしまうことがあります。

「昨日の友が、今日は敵」といった状態でしょう。

これを防止するには、ライセンシーの選定に十分に注意する必要があります。

全く同じ分野の企業同士でライセンス契約を締結すれば、ノウハウだけを奪われてしまうおそれがあるため、お互いの弱点を補うような関係にある企業間でライセンス契約を結ぶことが望ましいといえます。

例えば不動産会社と建設会社、食品会社と什器・容器会社などのような関係にあるライセンシーを選定すると、長きにわたる良きパートナーとしての協力関係を築きやすくなります。

 

自社の技術を開示するタイミングが重要

海外企業とのライセンス契約では、自社の技術を開示するタイミングが非常に重要です。

特に欧米・欧州の海外企業になると非常に交渉に長けている感があり、本契約を前にできるだけ技術を盗み取ろうとする傾向があります。

秘密保持契約を締結したからといって安心してはいけません。

本契約前に自社のコア技術を盗むために、設計図や基幹部品のサンプルの提出を求められることがありますが、決してこれに応じてはいけません。

技術者などによる工場見学なども同様です。

設計図や基幹部品のサンプルを相手に与えたり、重要な製造現場の見学を許してしまえば、技術者による解析が進められてしまい、その間はずるずると交渉の引き伸ばしを受けてしまいます。

もし解析が完了してしまえば、相手側から見てライセンス契約を締結する意味がなくなってしまうため、破断に陥ってしまうおそれが大となります。

ライセンス契約が破断になるだけならまだしも、奪われた技術によって数年後には類似製品や改良製品が登場することになれば、自社の大きな障害となることは間違いありません。

自社の技術を開示しても良いのは、本契約を締結し、ロイヤリティの支払いなど重要な事項が定まってからです。

本契約前の段階では、自社技術の優位性を示す資料やサンプルを見せるだけに止めるのが賢明でしょう。

 

海外企業に負けないライセンス契約にするためには?

海外企業は国内企業とは異なり交渉に長けています。

さらに、国内企業にはない「ずる賢さ」も持っているため、海外企業とのライセンス契約は自社が不利に陥ることも多々あります。

ここでは、海外企業に負けないライセンス契約にするためのポイントを挙げてみましょう。

まず「契約書のドラフトは必ず自社側で用意する」ことです。

相手側が用意したドラフトには、相手側が有利に、自社側が不利になる罠が仕掛けられていることがあり、これを見破るのは容易ではありません。

特に自社がライセンサーとなる場合は契約書のドラフト作成は日本側がおこなうことを前もって提案しておくことが重要です。

また、研究・開発部門が法務・知財部門に相談もなく独断で「英語の契約書になるので先方に任せる」と提案してしまうケースも散見されるため注意が必要です。

次に「修正には理由を添える」ことを心がけたいポイントです。

海外企業、特に欧米の企業では論理的思考が好まれる傾向があるため、なんの説明もなく契約書の修正をおこなうと承服してくれません。

重要事項の修正については「なぜ修正したのか?」のコメントを添えておくことで理解を求めるべきでしょう。

最後に「過去の契約書をひながたにしない」ことを心得ておきましょう。

過去の契約書は、過去の契約において双方が主張しお互いが折衷した「妥協の産物」だと言われています。

それゆえに、最終的にはまとまりを見せていても過去の契約書は弱腰とも捉えられる点が多々あります。

海外企業とのライセンス契約を結ぶ際には、できるだけシンプルな契約書をひながたとして使用し、強気な条件を提示しながらも「この点は折れても構わない」と思える捨てカードも用意しておくと良いでしょう。

海外企業とのライセンス契約には、契約書のドラフト作成から交渉テーブルにおける交渉術まで、国内企業が相手の場合とは異なった対応を求められます。

交渉を進める前に、知財のスペシャリストである弁理士にアドバイスを請うのがベストでしょう。

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