知的財産の重要性や保護については急激に理解が深まっている感がありますが、大企業のように法務部や知財担当部が整備されていない中小企業ではいまだ「わが社には関係ない」と考えている経営者や首脳陣が大勢います。

しかし、中小の企業こそが知的財産の保護について真剣に取り組むべきなのです。

中小企業こそ知的財産権について理解を深めないと、大きな打撃を受けてしまうということを知っておきましょう。

 

いまだ浸透しない中小企業の「知的財産の保護」

特許庁の調査によると「積極的に特許出願をおこなっている」という姿勢を持つ企業は、大企業が約50%であったのに対して中小企業はわずか20%程度にとどまっています。

調査結果の数字を見て大企業と中小企業を比較すると、中小企業の知的財産への意識の低さが浮き彫りになっています。

開発力に優れた大企業が特許出願に積極的であることは当然かもしれませんが、注目すべきは中小企業が特許出願に消極的である理由です。

中小企業が特許出願に消極的である理由としては「技術が流出するため」という点を挙げることが最多となっています。

特許は必ず『公開』に至るため「特許出願=営業秘密の流出」と捉えている中小企業が多く、この考え方が中小企業の知的財産保護を遅らせることになっています。

確かに「長年の経営によって蓄積したノウハウを流出させない」という方針は間違いではありません。

しかし、営業秘密にこだわることによって、ライセンス事業など知的財産を活用したさらに上位のビジネスステージへの移行を阻害しているともいえるのではないでしょうか。

また、商標についても「長年、商標登録などしていないが何ら不都合はないしコストがかかるのでムダだ」と考える企業も数多く存在します。

わが国の「モノ作り」が世界的に注目されている中で、モノ作りの原動力である中小・下請けの企業がブランド力の強化に目を向けないことは大きな損害になるといえるでしょう。

 

知的財産保護を軽視すると「損をする」といえる理由

中小企業が知的財産の保護を軽視してしまうと、大企業との競争で必ずといっても良いほどに打ち負けることになります。

大企業は商品の数、生産力、販路、どれをとっても中小企業に優っているため、たとえば自社と全く同じ製品をリリースしたとすれば大企業が市場で大多数を占めることになるのは当然です。

なぜ知的財産の保護が重要なのかというと、知的財産は「開発力・生産力に劣る中小企業が大企業と同じ市場で戦うための強力な武器となる」と考えるべきなのです。

たとえば、中小企業がアイデア商品を発明したとします。しかし、小さな企業で生産のために工場を作るのはリスクが大きすぎるので、大企業に製造委託して販売するケースもあるでしょう。そこで、製造委託先の大企業から「その商品はうちのものだからマネするな!」と権利侵害を訴えられたらどうでしょうか?

知的財産権を軽視していると、こんな滅茶苦茶な主張でさえ成立してしまい、大きな損害を被る可能性があります。

特許を取得するなど、知的財産権について対策をしていれば、裁判にもしっかり対応することができるので、泣き寝入りを回避することができます。

 

社名変更・ライセンス料の支払い…知的財産保護を軽んじた結果

特に技術開発に注力していない中小企業でも積極的に保護すべき知的財産として挙げられるのが『商標』です。

社名やロゴマークなどを保護するのが商標権ですが、商標は先んじて特許庁に出願されたものが優先して権利化されます。

もし長年使用してきた社名やロゴマークについて商標登録を怠っていれば、第三者によって商標登録されてしまうおそれがあります。

第三者によって商標登録されれば、社名変更を余儀なくされたり、ライセンス料を支払って商標権者の許諾を得ながら使用するほかない事態にもなりかねません。

一応は先使用権を主張して対抗することも可能ではありますが、証拠集めなどのコストが発生してしまいますし、主張が必ず通るとも限りません。それよりは、初めから商標登録をして自社ブランドを守る方がよいでしょう。

中小企業の知的財産保護対策には、現状を把握したうえで必要なアドバイスを享受してくれる特許事務所に相談するのがベストです。

知的財産のプロフェッショナルである弁理士の視点によって企業診断を受けて、自社が保有しており権利化を目指すべき知的財産のピックアップし、いま取るべき対策を講じましょう。

弁理士の視点からアドバイスを受ければ、知的財産保護を怠って大きな損失を被ることを防ぐだけでなく、保護を強化した知的財産によって大きな利益をもたらす可能性が見えてくるかもしれません。