意匠のライセンス契約は意匠権を活用したビジネスの幅を広げる一つの手法です。

知財のライセンス契約はトラブルに発展することが多いので、契約書に必須の記載事項をチェックしておきましょう。

 

意匠のライセンス契約

意匠権はデザインを保護する権利です。

意匠権が登録されれば、他者が無断でデザインを模倣することが禁じられ、もし模倣されることがあれば模倣者に対して模倣品の販売の差止め請求や損害賠償を請求することが可能となる強力な権利です。

もちろん、デザインの模倣を規制して自社製品の個性を武器にシェアを拡大・確保することを目的とするのが第一ですが、他者にデザインの使用を許諾して使用料の支払いを求めるという手法でも利益を得ることができます。

これが意匠のライセンス契約です。

意匠のライセンス契約を締結することで、他者にデザインの使用を許諾し使用料を得るというビジネスの幅が広がります。

 

意匠のライセンス契約の形態

意匠のライセンス契約には2つの形態があります。

登録された意匠を使用する権利を『実施権』と呼び、意匠権が発生すると同時に意匠権者には実施権が発生します。

実施権をライセンスするにあたっては、大きく分けると専用実施権・通常実施権の2つの形態のうちいずれかを選択することになります。

専用実施権特許庁に登録することで意匠権者までもが実施を禁じられる独占排他的なものです。

通常実施権意匠権者・実施権者ともに実施が可能で、複数の実施権者にライセンスすることも可能です。

また、通常実施権の一形態として、“独占的通常実施権”と呼ばれるものがあり、これは、意匠権者と1人の実施権者だけが実施できるとするものです。

これらの選択は、意匠権者にとって「どの程度の範囲を許諾するのか」という大きな問題につながるため、慎重に決定する必要があります。

 

意匠のライセンス契約書に記載すべき事項

ライセンス契約においては必ず契約書を交わして契約内容を担保します。

知的財産のライセンス契約は、契約書の内容や不備によってトラブルが引き起こされることが多いため、意匠のライセンス契約を交わす際にも記載事項を十二分にチェックしておくべきでしょう。

ここでは意匠のライセンス契約書に必ず記載しておくべき事項を紹介します。

まず「対象の特定」は必須です。

どのようなデザインの使用を許諾するのかは意匠のライセンス契約の根幹でもあります。

名称を明確に記載するほか、意匠登録番号を付記したり、図面を加えるのも良いでしょう。

特に注意したいのが、意匠権として登録した意匠の中でも、特定の色や模様のものなど制限したい場合には、その旨の契約を含めることが必要になります。

 

「実施権の範囲」も重要です。

先ほど説明した専用実施権・通常実施権・仮通常実施権のいずれを許諾するのかは、意匠権ライセンスビジネスとしてだけでなく、そのデザインを利用した意匠権者自身の経営方針をも左右することになります。

「期間」の設定も大切です。

特に専用実施権を設定する契約の場合、その期間中は意匠権者さえもそのデザインを使用することができないので、たとえば自社製品の製造においても実施は不可能となり、意匠を利用した商権自体を丸々許諾するのと同じです。

実施権者に販売能力があるのか否かなどを十分に評価して、期間を設定することが重要です。

許諾の期間は無策に長期を設定することがないようにしましょう。

「ロイヤリティ」はライセンスビジネスの肝ともいうべきポイントです。

ロイヤリティ=使用料の支払いがあってこそのライセンスビジネスです。

ロイヤリティの支払い方法は、一般的に売上げや生産量によって変動するランニングロイヤリティ方式と、期間中に一括または分割で定額を支払う定額実施料方式があります。

「品質管理」も重要な項目です。

意匠権者としては、許諾したデザインを使用して粗悪な製品を製造・販売されてしまえば、ライセンス期間が終了した後にその意匠を活用したビジネスを展開するにあたって大きな障壁となってしまいます。

契約相手によっては、完成した製品の検査などを定期的に意匠権者が実施できるよう規定しておきましょう。

「契約終了時の取扱い」は忘れずに定めておきましょう。

ライセンス契約が終了した時点で販売中の製品や在庫となった製品をどのように扱うのかを取り決めておかないと、ライセンス期間が終了してもライセンシーがその意匠を利用したビジネスを続けられるのかが不明確になって争いの原因となってしまいます。

「不争義務」も必ず加えておきましょう。

ライセンシーの中には、無効理由を主張することでライセンス料の支払いを免れようとする輩も存在するため、不争義務を課して防御する必要があります。

 

意匠のライセンス契約には弁理士のアドバイスが必須

これらの契約事項は、一つでも漏れがあれば自社が所有する意匠のブランド力を失墜させたり、ライセンスビジネスによる利益が目減りしてしまったり、悪意あるライセンシーの攻撃によって意匠自体の効力を失わせたりもすることがあります。

意匠のライセンス契約を実りあるものにして、意匠権者とライセンシーがWin-Winの関係を築くためには、必要事項を漏らさず検討した契約書の作成が必要です。

意匠のライセンス契約を検討している場合は、ライセンス契約の締結に詳しく経験が豊富な弁理士に任せるのが最も利口です

意匠のライセンス契約の締結を目指す際には、早い段階で弁理士に相談してアドバイスを受けましょう。

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