世界的に遅れを取っている、日本のバイオ特許

知的財産の中でも特許は人々の暮らしを豊かに、便利に革新させるものです。

ある一つの特許がもたらす利便性がこれまでに不可能だったことを可能にする場面は多く、だからこそ特許は、研究に携わった個人や団体の権利を保護して研究の対価として大きな利益を得ることができる体制が構築されています。

とりわけバイオ特許には、人々の健康・エネルギー問題・食料問題・廃棄物の処理問題など、全人類的な課題をクリアしていくために有益な発明が多く、研究にかかる時間・人員・コストが莫大となってしまう反面、有益なバイオ特許を世に送り出せば相応の利益を手にすることが叶えられます。

バイオ特許の発展は、人々の豊かな暮らしに大きく寄与するものですが、残念ながらわが国におけるバイオ特許の出願数は世界的にみて少ないという現実があります。

日本のバイオ特許の出願数は、世界の出願数に対して6.9%にとどまっています(2012-2017年)。

2018年に閣議決定された「統合イノベーション戦略」では、特に取り組みを強化する分野の1つとしてバイオテクノロジーがあげられ、2019年には「バイオ戦略2019が統合イノベーション戦略推進会議で決定されました。

バイオ戦略2019では、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」することが目標として掲げられています。

 

バイオ特許を出願する際の戦略とは?

バイオ特許を出願する際は、バイオ特許の特性を理解しておく必要があります。

バイオ特許は「一つの特許が持つ価値が非常に高い」という点が他の分野の特許と比べると非常に特異であることが特性として挙げられます。

たとえば、みなさんが手にしているスマートフォンは数百もの企業が持っている25万件もの特許が関連しており、スマートフォンの価格の30%近くが特許使用料であるとも言われているほど特許技術が集中して完成しています。

一方、バイオ特許の中でも代表的な医薬品であれば、一つの医薬品に対して一件のキー特許だけで権利がプロテクトされています。

言い換えれば、スマートフォンなどに代表される電子機器類のように多くの企業がライセンス関係にある分野よりも、たった一つのキー特許を取得するだけで市場で戦うことができるバイオ分野は、研究対象や市場戦略の絞り込みが容易であるとも考えられます。

この点は、バイオ特許の研究陣にとって非常に有益な特性だと言えるでしょう。

バイオ特許の出願を検討する際には、キー特許となる一つの特許を戦略的に厳選する必要があります

キー特許を選定する際には、先行技術や類似する技術がないか、他者の特許を犯すおそれはないかなどの調査を幅広く厳密に徹底する必要があることは当然のことですが、それ以上に、その一つのキー特許が本当に高い価値へと昇華するものかどうかを見極めることが重要です。

市場で競合する発明のシェアを十二分に奪うことができるほどの能力がある特許でないと、研究に費やす期間やコストが莫大になることが多いバイオ特許の分野では、費用対効果が低く資金回収が望めない場合があります。

また、バイオ特許の出願を目指す場合は、自社にその特許の実施にかかる必要な知識や技術が十分であるかを検討する必要があります。

海外では企業がバイオ特許の出願を目指す過程で大学などの研究機関と協力関係を構築するケースが非常に多く、自社だけでは発明の実現が困難な場合は自社独自の研究・開発にとらわれることなく、タッグを組む相手として研究機関を選定することも必要でしょう。

 

バイオ特許の出願を成功させるには専門家のサポートが必須

バイオ特許の出願・登録は他の分野の特許出願・登録と比べると非常に難易度が高いと言われています。

バイオ特許は、特に発明の『進歩性』が登録への重要な要件となっており、進歩性の低いバイオ特許は特許庁から拒絶を受けて登録には至りません。

バイオ特許の進歩性を明細書に記述するには、非常に専門的かつ煩雑な明細書の表現方法や記述に精通した弁理士のサポートを受けることが必須だと言えます。

また、バイオ特許の出願・登録を戦略的に進めていくためには、バイオ分野に精通した弁理士が所属する特許事務所を選定しサポートを依頼することが重要です。

出願・登録を目指したい発明が真に価値のあるものなのか、市場の独占に有効な技術で自社に研究コストの対価として十分な利益をもたらすものなのかの選別も、知識と経験を有する弁理士の目でチェックを受けることが、バイオ特許出願に成功する秘訣となります。

バイオ特許の出願・登録を目指す場合は、研究の推進と並行してできるだけ早い段階で特許事務所に相談することをお勧めします。