ライセンス契約は、ライセンサーにのみ有利でライセンシーにとって著しく不利な条件を付されることも珍しくありません。

ライセンス契約を締結する際に自社が著しく不利な状況に陥らないための契約書の読み取り方についてライセンシー側の視点から紹介します。

 

ライセンス契約が不利にならないために

ライセンス契約は「ライセンサーから許諾を受ける」という構造の契約です。

そのため、得てしてライセンサーにのみ有利であり、ライセンシーにとって著しく不利な条件を付されることは珍しくありません。

自社が保有している知的財産について第三者に使用を許諾するのですから、それ相応の対価の支払いを求めたり、優位な立場を保持しようとすることは当然といえば当然です。

ただし、著しくライセンシーにとって不利な条件を付されたライセンス契約では、せっかく許諾を受けても十分にビジネスに活かすことができなかったり、順調に活用していたとしても突如として契約を解除されるおそれも払拭できません。

ここでは、ライセンス契約を締結する場合のライセンス契約書の読み取り方について、ライセンシー側の視点から紹介していきます。

 

ライセンス契約書の読み取り方

自社がライセンシーとなる場合のライセンス契約書について、自社が著しく不利になるおそれがあるポイントを挙げて解説していきましょう。

 

①実施料・使用料の支払い方法

ライセンス契約を活用した知財ビジネスの根幹は「実施料・使用料による収益」です。

他社が保有している知的財産の使用の許諾を受けるのですから、こちらが相応の対価を支払うのは当然ですが、実施料・使用料の支払い方法は十分に検討すべきです。

ライセンス契約における実施料・使用料の支払い方法は「月々◯◯円」のような定額方式と「売上げに対して◯◯%」と定める定率法式のいずれかが採用されるのが一般的ですが、定率法式が採用されている場合、自社の売上げをライセンサーにチェックされることになることを知らないまま定率法式での契約を締結している事例が散見されます。

ライセンサーから売上げのチェックを受ける際には、いかに対策を講じても自社の顧客情報など営業機密が漏洩するおそれがあります。

実施料・使用料の支払い方法については、無策に定率法式を受け入れることのないようにしましょう。

 

②契約期間

ライセンス契約には契約期間が設定されます。

契約が長期に渡れば相応の実施料の支払いが発生し、場合によっては契約時に一時金の支払いを求められることも有り得ます。

反対に契約が短期に設定されていれば、例えば特許権のライセンス契約を結んで自社が実施し、地道な営業や販促が実を結んでビジネスが軌道に乗り始めたという頃に「契約期間が満了したから」という理由で、ライセンス料の値上げ交渉等を持ちかけられてしまうこともあります。

ライセンス契約の期間は、対象となる知的財産を活用したビジネス計画などと照らして十分に検討すべきでしょう。

 

③独占・非独占

ライセンス契約が独占的であるか、非独占的であるかは、ライセンシーにとって非常に重要な問題です。

特許権と意匠権においては専用実施権と通常実施権が、商標権においては専用使用権と通常使用権とがありますが、『専用』の場合は権利者であっても実施・使用が許されない排他的な契約、『通常』の場合は独占的であれば権利者と1つのライセンシーのみ、非独占的であれば複数のライセンシーに実施・使用の権利が与えられることになります。

ライセンス契約に慣れていれば見誤ることはありませんが、不慣れであればライセンス契約書の文言に『独占的通常使用権』と記載されていると権利者を排除して実施・使用権が与えられるものと誤認するおそれもあります。

ほとんどのライセンス契約書は、平易な表現を使用していない専門的な記述になっていますが、ライセンス契約書に記載された文言を十二分に咀嚼する必要があります。

 

④改良・関連発明の取扱い

特許権のライセンス契約の場合、ライセンシーが特許を実施中に改良発明や関連発明を開発することがあります。

ライセンサーとしては、そもそもは自社の特許ありきの発明なので、改良・関連発明も自社に帰属させたいと考えるでしょう。

改良・関連発明の帰属をライセンシーに義務付ける契約は不公正な取引きと見なす考え方が一般的ですが、これを受任してまでもライセンス契約を締結するか否かはライセンシーの自由でもあります。

ライセンス契約書にこの条項が記載されていた場合には、将来的な開発の可能性を含めた検討が必要となることに十分注意しましょう。

 

不利なライセンス契約を見抜くために

ライセンス契約は、ライセンサーは狭い範囲を許諾して高い収益を得たい、ライセンシーはより広い範囲の許諾を安い実施料・使用料で使いたいという考えを持っているのが当然であって、両者の目論見は最初から異なっています。

自社にとって著しく不利な条件になっていたとしても、知的財産という専門性の高い分野であるがために不利な条件であることを見抜けないままライセンス契約を締結してしまい、後に契約書の内容を楯に取られて期待していた収益が得られなかったり不利益を被ることも有り得ます。

不利なライセンス契約を見抜くためには、自社で十二分に検討することも大切ですが、ライセンス契約の締結を検討している段階において、知的財産の専門家である弁理士に相談し、アドバイスを受けるのが最も賢明でしょう。

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