特許・実用新案

2018.04.18

共同出願した特許、自己分を破棄したいが可能?

特許権は財産権の一つであり自由に放棄が可能です。

では、共同出願によって取得した特許権について、自己の持分を放棄したい場合はどのような手続きを取ることになるのでしょうか?

 

特許権は放棄できる?

一つの特許権を取得するためには、多くの資産と長い時間を投資する必要があります。

また、ひとたび権利を取得した特許は、毎年の特許維持年金を納付しながら権利を確保していくことにもなります。

つまり特許権は、取得のためにも、維持のためにも多額のコストがかかるものだと言えます。

ここで、ある発明について特許権を取得したA社があったとしましょう。

A社は、独自に開発した発明によって業界シェアの拡大を目指し、その発明の特許を取得しました。

ところが、数年後、A社の特許技術よりも優れた性能を備えた発明をB社が発明し、A社の特許技術は陳腐化してしまいB社に業界シェアを奪われてしまったとすれば、果たしてA社は多額のコストをかけながら特許権を維持する意味があるのでしょうか?

このようなケースでは、A社の立場に立てば「特許権を維持するのはコストのムダ」という経営判断になるでしょう。

そこでA社が取る手段が『特許権の放棄』です。

特許権の放棄は、次年度の特許料を納付しないことで消滅するのを待つか、あるいは特許庁に対して『放棄による特許権抹消登録申請書』を提出することで成立します。

また、特許権が登録される前であれば、実体審査の審査請求をおこなわなかったり、拒絶理由通知や拒絶査定に対し対応しなかったり、特許査定を受けても特許料を納めないという手段もあります。

特許権は財産権であり、その権利を使用することも、不要なので放棄することも、所有者たる特許権者の自由です。

ただし、その特許権に質権や専用実施権などが設定されていれば、質権の設定者や実施権者に不利益が生じるため利害関係者の承認が必要となり、いかに特許権者だとしても自由な処分はできないことが規定されています。

 

共同出願した特許の放棄は可能?

ある特許権に対して特許権者が1名の場合は、特許権者の自由において特許権の放棄が可能です。

それによって、特許権は消滅します。

では、A社とB社の共同開発によって生み出されたなど、共同出願した特許についてはどうなるのでしょうか?

まず、共同出願された特許権は、特段の定めがある場合を除いて、原則的に平等に持分を所有すると定められています

A社とB社でいえば、共同出願の契約書に持分の定めを設けていない限り、A社=50%・B社=50%の持分を所有することになります。

では、A社が共同出願した特許の維持は不要と判断して放棄したとすれば、その特許は消滅するのでしょうか?

答えは『×』です。

共有財産の放棄については、民法第255条に「共有財産について共有者の一人がその持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属する」と定められています。

よって、知的財産権の一つである特許権についても、共同出願によって持分を共有している一人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属することになります。

共同出願した特許がいまだ登録に至っていない場合は、出願人の名義が変わることになるため特許庁に対して『持分放棄書』の提出と併せて『出願人名義変更届』を提出することになります。

もし、ある共有者が単独で持分放棄を届け出た場合は、特許庁から他の共有者にも通知がなされることになります。

これは、他の共有者がある共有者の持分放棄を知らなかった場合、審査請求を怠って出願が無効になってしまうなどの不都合が起こることを防止するためです。

また、共同出願した特許が登録に至っている場合、共有者の持分は特許庁の原簿に登載されているので、放棄によって移転した持分を登録するため『特許放棄証明書』を添えて『持分放棄による持分移転登録申請書』を提出する必要があります。

 

持分放棄の際の注意事項

持分放棄をおこない、放棄した持分を按分する場合、他の共有者に生じる減免措置の取扱いについて注意しましょう。

中小ベンチャー企業・小規模企業等や所得税非課税者などの個人が共同出願して審査請求料などの減免措置を受けている場合は、持分の按分割合によって減免措置の対象外となることがあります。

例えば、元々はA・B・Cがそれぞれ1/3ずつを所有した共同出願特許では、Aが持分放棄をして、BとCにそれぞれ1/2ずつを按分した場合は、放棄後の持分が元々の按分割合と同じなので、引き続き減免措置の対象となります。

ところが、Bは1/3・Cは2/3のように放棄後の持分が元々の按分割合と異なる場合は、減免措置の対象から除外されてしまいます。

また、特許登録後であっても、特許料の減免措置を受けている場合は同様に按分割合によって措置の対象・非対象が決まることにも注意が必要です。

ある共有者が持分を放棄し、引き続き手続料の減免措置を受けたい場合は、割合を維持した按分をおこなう必要があることに留意しておきましょう。

 

共同出願にかかる持分放棄は特許事務所に相談を

共同出願にかかる特許権の持分放棄は、特許庁への申請や共同出願した他の共有者への影響などを考慮すると、容易に実行できることではありません。

 

特許庁からの通知があるので、共有者において「知らなかった」という事態に陥ることはありませんが、事前の相談などもなく持分放棄の通知が送られてしまえば、共有者との関係維持にも悪影響を及ぼすでしょう。

 

共同出願にかかる持分放棄を進めたいとお考えの場合は、まずは信頼できる特許事務所に相談することをおすすめします。

 

知的財産の専門家である弁理士に一任することで、煩雑な持分放棄にかかる申請や持分の移転登録の手続きをお任せできます。

特許庁の手続きは用語ひとつをとっても専門的なものが多く、一般的には難しい手続きとなるため、スムーズで確実な持分放棄を目指すのであれば弁理士のサポートは必須です。

 

また、他の共有者に対する説明や持分移転にかかる折衝なども、代理人として明確な交渉が可能となるでしょう。

 

 

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2018.04.18

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