ライセンス契約は、第三者に実施を許諾するだけで利益を得るイメージになりがちですが、思わぬ損害を被ることもあります。

ライセンス契約で損をしないためのポイントをまとめました。

 

損する?得する?ライセンス契約は契約内容が大切

ライセンス契約は、ライセンサーである特許権者が、ライセンシーに特許の使用を許諾し、その対価としてライセンシーから特許使用料(ロイヤリティ)の支払いを受けることを内容とする契約です。

一見すると、第三者に特許の使用を許諾するだけで直ちに利益を得ることができますが、ライセンス契約の内容によっては、十分な利益を得られないという事態に陥ることも有り得ます。

例えば、ライセンス契約を交わすとロイヤリティについても取り決めをおこないますが、ロイヤリティの設定の仕方を誤ると利益を得るどころか損失のほうが大きくなることがあるのです。

ロイヤリティの設定方法には、販売実績に対して一定割合を支払う販売額ロイヤリティ、販売・使用・製造などの実施行為が発生した製品に対して固定額を支払う対物ロイヤリティ、実施の許諾に対して一定額を支払う定額ロイヤリティがあります。

仮にライセンシーが市場での販売力・販路を十分に持たなかった場合、ライセンシーの事業戦略の変化によって対象となる製品の販売が予定より伸びなかった場合には、販売額ロイヤリティや対物ロイヤリティでは、ロイヤリティが予想より少額になってしまうという問題が生じます。

 

反対に、売上げが期待できないと予測して定額ロイヤリティを設定したが、爆発的ヒット商品となった場合には、わずかなロイヤリティしか得られないという事態も起こり得ます。

 

このようなリスクを回避するためには、条件に応じて複数のロイヤリティ方式を定めておくという方法があります。

例えば、基本的には、販売額や販売個数に応じたロイヤリティとしておいて、併せて最低ロイヤリティ額を定めておくことが考えられます。

或いは、最初は少額の固定ロイヤリティ額としておいて、販売額や個数等の条件別にロイヤリティ額を変更するような表を作成しておくことも考えられます。

ライセンス契約の際には、将来起こり得ることをできる限り予測しながら、最適化できるような規定を心がけることが大切であると認識しましょう。

 

ライセンス契約で損をしないために盛り込みたい事項

ライセンス契約では、自らが実施者ではないため予測しなかった事態が起こることがあるので、リスクを踏まえた契約を交わす必要があります。

例えば、ライセンサーも同種の製品を製造販売している場合であって、ライセンシーが粗悪な製品を製造・販売した場合、市場ではライセンシーだけでなく特許権者に対する評価も下がってしまい、最悪の場合は株価などにも悪影響を及ぼすことが予想されます。

これを回避するため、ライセンシーに対し製品の品質基準を設けたり試作品の提出を求めたり原材料の仕入れ先を指定するなどを定めた品質保持規定を盛り込むことが考えられるでしょう。

反対に、ライセンサーは同種の製品を製造販売していない場合には、ライセンシーの製品の品質等を管理することはできません。

その場合には、ライセンシーの管理責任を明確にすることが大切です。

また、ライセンシーがライセンスした特許技術を基盤として新たな発明を生み出すことも考えられます。

ライセンサーが同種の製品を販売している場合には、このような改良発明・関連発明については、独占的に自由に実施されると市場の独占を犯されて大損害を被ってしまいます。

この場合には、反対にライセンスの許諾や譲渡を受けることができるという規定を盛り込んでおくことが考えられます。

但し、改良発明・関連発明をライセンサーに無償で独占的に帰属させたり、譲渡することを義務付けたりすると独占禁止法に違反することになりますので注意が必要です。

ライセンスの許諾や譲渡を受けることができるという規定を盛り込む場合には、相応の対価の支払いをすることを盛り込んでおくことが必要です。

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