特許権を活かしたビジネスモデルとして挙げられる第三者への許諾。

第三者への許諾に対してロイヤリティを得ることで収益となりますが、ロイヤリティはいくらに設定すれば良いのでしょうか?

 

特許権のロイヤリティ設定に決まりはない?

特許権を得ると原始的には独占的に発明を実施することで、利益を独占することが可能になりますが、同時に「第三者に実施を許諾する」ことでその対価としてロイヤリティを受け取ることで利益を享受するという選択肢を取ることも可能となります。

ここで重要となるのが、特許使用料、つまりロイヤリティの存在です。

さて、ロイヤリティはどのくらいにすべきという決まりはあるのでしょうか。
実は、ロイヤリティについては、金額や支払い方法などについて法令による特段の定めはありません。

つまり、ロイヤリティがいくらであるとか、いつ、どのように支払うなどは、特許権者と実施者の間で自由に契約できます。

契約時にいくら、販売額に対して何%などの設定は、全て両者の自由契約によって決定することができます。

 

特許権のロイヤリティの相場は?

特許権にもとづいてライセンスを与えることによりビジネス展開をする事業モデルでは、ロイヤリティをいくらにするのかという問題は非常に重要です。

もちろん、高いに越したことはないのですが、ロイヤリティは特許権者と実施者の自由契約によって決まるため、算定基準、公式などはそもそも存在しません。ですので、まずどのような価格をたたき台として交渉を進めていけばいいのか見当もつかないことがあります。

そのようなときに一つたたき台を作成するための考え方として、『25%ルール』という考え方があります。
これは、ライセンシー(特許のライセンスを受けて事業を行う人)の営業利益の25%をライセンスの対価として算定するものです。
『25%ルール』というものが、経験則上有用な基準として用いられています。

また、一般社団法人発明協会が発行する『実施料率』では、分類別のロイヤリティの概ねの基準額が示されており長年の間訴訟などにおいて参照されてきました。

2018年に組織された日本知的財産仲裁センターのプロジェクトチームは、研究報告書の中で「発明協会が公表している『実施料率』は外国技術を導入した契約をもとに算定されているため、双方が国内企業の場合に用いるのは的確ではない」と指摘しています。

たとえば、電子計算機等における実施料率の平均値は13.5%であると示されていますが、国内における最頻値は1%であり、資料と現実の相場の間には大きな解離が認められるのです。

最新の調査資料としては、特許庁の調査結果をまとめた「平成21年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書」があり、全市場におけるロイヤリティの平均額は売り上げの3.7%という結果が出ています。

分類別で最もロイヤリティの相場が高いのが売り上げのバイオ・製薬の6%。次に健康・人命救助・娯楽の5.3%、化学の4.3%となっており、一般的に特許取得に投資するコストが高くなる傾向がある業界ほどロイヤリティの相場も高くなっています。

明確な相場は存在せず、また一般的に活用されている基準は疑わしいものではありますが、売り上げの1~10%程の範囲で決定されることは確かでしょう。

 

相場だけにとらわれないロイヤリティの決定が必要

先に述べた調査結果で示された相場はあくまでも平均値であり、実際にロイヤリティを決定する際には必ずしも相場に沿う必要はありませんし、交渉を「相場」によって縛ることは、好ましくありません。

通常、スタートアップやベンチャー企業がライセンスを検討する際、類似の取引実績が世の中にごろごろ存在していることはありません。つまり、相場といっても、全く異なる状況での契約の平均値に過ぎず、本来の意味での参考値とはいえないわけです。
そのため、ライセンシーにとって莫大な収益が得られる可能性を秘めている特許であるにもかかわらず、過小評価となってしまったり、一方、大体技術が多数あり対価性が低い特許であるにもかかわらず相場程度のロイヤリティに固執するあまりに破談に陥って収益化が望めないといった事態も考えられます。

ライセンシーのビジネスモデル、予測される製品の販売利益等を綿密に考慮し、相手方が許容できる最大の価格を探っていく必要があります。

 

あわせて読みたい

ライセンス関連記事まとめ