半世紀ぶりの改正で著作権が「死後70年」に延長

1970年に制定された現行の著作権法では、著作権は、映画などの著作物と例外的な保護期間が生じるものを除いて原則的に「著作者の死後50年間」と定められています。

ところが、海外では1990年代において既に「死後70年」への法改正が進められていました。

日本も主要国との調和を求められており、環太平洋経済連携協定(TPP)において「死後70年」への改正に合意していました。

2018年2月、政府は「死後70年」への法改正を国会に提出する意向を固め、近く、著作権法が改正され、音楽や小説の著作権は著作者の死後70年間が保護期間となることが正式に決定しました。

著作権の保護期間が著作者の死後70年になることの具体的な影響を例示しましょう。

1970年に死去した三島由紀夫、1972年に死去した川端康成の文学作品は、保護期間終了を間近に法改正されることでさらに20年間の保護期間を得ることになります。

インターネットで無料で過去の文学作品を掲載しているサイトなどでは、近く無料で掲載可能になる予定だった作品のアップが20年先送りされることにが決定的となりました。

 

「死後70年」の問題点

知的財産権の保護が推進される時流においては、著作権の保護期間の延長は喜ばしいことに感じられます。

ところが、専門家の間では著作権の保護期間延長について議論が飛び交う問題となっています。

一体、どのような問題が議論されているのでしょうか?

まず、第一の問題は、著作者の権利保護と文化の発展の関係についてです。

インターネットを活用して著作物が公開されることが増えた昨今では、江戸川乱歩や谷崎潤一郎といった文豪の作品が無料で公開されています。

単行本・書籍の販売が伸び悩むという出版業界の杞憂は別問題として、インターネットでの作品の無料公開が、文学作品を世に広める役割を担っていることは確かです。

今回の保護期間延長による著作者の権利拡張が、万人の財産となる文化の発展を阻害するという問題は、盛んに議論されています。

第二の問題は、著作権の管理関係です。

著作権は、著作者が死去した場合に生存者に継承されます。

例えば、80歳で死去した著作者の著作権が、当時50歳の子息に継承されたとすれば、子息が120歳になるまで著作権が保護されることになります。

120歳となれば、当然、子息も死去しているものと予想されるので、さらに著作権は子息の子、つまり本来の著作権者の孫の代に継承されているはずです。

このように世代をまたいで著作権が継承されていれば、書籍の出版などで著作物の使用許諾を得るための作業が困難になり、著作物の新たな公開が阻害されるおそれがあります。

著作物を正しい手続き方法で使用しようとしても必要な手続きを踏むことが難しくなることは、公開の阻害だけでなく、違法利用が進んでしまうことも懸念されています。

今回の法改正は、著作権者サイドにおける著作権の管理について、さらなる徹底を求めることになるでしょう。