『職務著作』の基本的なルール

業務上、企業に属しながら創作性の高いデザインやイラスト、文章などを作成する機会があるでしょう。

特にデザイナーなどのクリエイティブな職業になれば、自社で使用するためのデザインやイラストを創作すること自体が通常業務となるため、創作したデザインやイラストなどの著作権について「自分自身に著作権があるのでは?」と考えた経験がある方も多いのではないでしょうか?

この点について、実は著作権法に明確な規定があります。

著作権法第15条は「法人などの業務に従事する者が作成した著作物の著作者は、契約や就業規則などで特段の定めがない限り、法人などとする」と規定しており、企業に属しながら業務として作成したデザインやイラストなどの著作権は企業にあることを明文化しています。

このルールを『職務著作』と呼びますが、類似した用語であり近年では訴訟問題などで注目を集めた『職務発明』とは性格を異にしています。

職務発明の原則は、あくまでも特許権者は発明者にあり、発明者を使用している企業は無償で発明を実施できるという考え方であり、職務著作とは概念が180度違うものだと言えるでしょう。

 

職務著作の原則が否定されるケース

原則的に、業務において作成された著作物の著作権は企業に属しますが、終身雇用が約束されず様々な雇用形態で就業する労働者が増えた近年では職務著作が否定される事例も増えています。

例えば、企業が使用するデザインをアルバイト契約で雇用したデザイナーが創作したケースにおいて、職務著作を否定し創作者であるデザイナーの著作権を認めた実例があります。

また、観光ビザで滞在していた外国人デザイナーが創作したデザインについて、正規の労働契約を結んでいないことを理由に職務著作を否定したケースもあります。

つまり、職務著作が認められるためには、単に「職務時間中に職務として作成したのか」という形式的な条件だけでなく、著作物を創作した者に対する対価の支払い額が妥当であるか、職務として認められる雇用契約がなされているのかなどによって総合的に判断されることになります。

自社が雇用する者が作成したデザインやイラストであっても、雇用契約の形態などによっては一様に職務著作が成立するわけではないことに注意を払っておきましょう。