商標はフランチャイズの経営を安定させる

商標権は自身の商品や役務の名称や標章を保護する権利であり、フランチャイズは対価を得て独自の経営ノウハウや商品を提供し第三者にビジネスを許諾することです。

ここで「商標権とフランチャイズ権の関係性」と言われると、あまり関係がないもののように聞こえるかもしれませんが、商標権はフランチャイズの経営を安定させるために非常に重要な役割を担っています。

そもそもフランチャイズとは、例えばA社が提供する商品やサービスのノウハウなどを、A社にライセンス料を支払うことで、契約者がA社の名前を名乗って商品やサービスを提供するビジネスの形態です。

ここでいうA社の立場はフランチャイザー、A社の名前を使う契約者の立場をフランチャイジーと呼びます。

もし、同じビジネスを行う他社が自由にA社の名前を名乗っていれば、フランチャイザーであるA社は消費者が混同することによって売上やブランド力が低下してしまい、フランチャイジーである契約者にとってはフランチャイズ契約を結ぶ意味が失くなってしまいます。

そこでフランチャイザー・フランチャイジーの両者の権利を保護するために機能するのが商標権です。

A社が自社の商品やサービスを商標登録することによって、競合他社が無断でA社のブランドを使用することを防止し、フランチャイザーとしての権利と利益を守ることができます。

また、フランチャイジーにとっても、保護された商標を使用する権利を得ることで安定した経営が可能となります。

新規事業の5年後生存率は、フランチャイズ契約の場合は65%と言われており、フランチャイズ契約外の場合が15%にとどまることと比較すると、商標がフランチャイズ事業の経営を安定させる強力な武器となっていることが理解できるでしょう。

 

フランチャイズ事業における商標権についての着眼点

フランチャイズと商標権の関係を紐解くと、フランチャイズ契約を結ぶ際に着目すべきポイントが見えてきます。

まずフランチャイザーにとっては、既に登録している本業の商品・役務の区分に加えて、第35類の「広告・ショッピングモール・求人情報の提供他」への登録が必要となります。

例えばラーメン店がフランチャイズ事業を展開する場合、第43類の「飲食物の提供」への登録が必要ですが、ラーメン店の経営ノウハウなどを第三者に提供するフランチャイズ事業は飲食物の提供に当たらないため、第35類での登録が必要となるわけです。

フランチャイジーにとっては、契約を検討しているフランチャイズ事業の商品や役務が適切な区分において商標登録しているかを確認する必要があります。

フランチャイズ契約後に、商品が商標登録されていなかったため模倣品が流通しているなどの事態になってしまえば、せっかくライセンス料を支払って契約したのに独占的な販売やブランド力を活かした営業展開が不可能となってしまうからです。

どちらの立場においても、商標権とフランチャイズの関係をよく理解しておくことが、ビジネス成功の基礎となるでしょう。