周知商標と著名商標の違い

商標権は「成長する権利」と呼ばれることがあります。

例えば、ある製品を開発し一地方でのみ認知されていた商標が、製品の質が良く周辺の都道府県でも知られる存在になったり、特定の業界において知名度が高い存在になると、その商標は『周知商標』へと成長します。

商標制度は、出願時に「使用の意思」が求められるものであり、登録後に商標権を維持するためには指定の商品・役務の区分で実際に使用している事実が求められますが、周知商標になると、同じ区分において出所の混同を招くおそれがある商標を排除することができるようになります。

たとえ周知商標が商標登録を実現していなくても、周知商標が存在することで後の出願人は同一または類似した商標を登録することができなくなるのです。

さらに、周知商標がある地方や業界で認知されるのみに止まらず、全国的に知名度が高い存在になると『著名商標』へと成長します。

著名商標は、日本全国において知られている程度の高い知名度を要しますが、指定の商品・役務の区分だけでなく、使用する意思のない区分においても出所の混同を招くおそれがあるとして他の商標を排除することが可能となります。

周知商標と著名商標は「認知度が高い商標」という意味合いにおいて類似していますが、認知の程度で比較すると周知商標<著名商標となる点に大きな違いがあると言えるでしょう。

 

防護標章登録とは?

周知商標と著名商標の大きな違いとして挙げられるのが『防護標章登録』の存在です。

防護標章登録とは、使用する意思のない商品・役務の区分においても同一の商標の登録を防ぐ制度です。

商標登録は、原則的には指定商品・役務の区分において使用の事実が求められますが、この原則に従えば、例えば全世界的にアニメーションやアミューズメント施設で有名な『ディズニー』という商標を全く関連性のないアダルトショップの店舗名に使用したとしても問題は生じません。

ところが、防護標章登録を行えば、同一・類似だけでなく、全くの非類似区分においても商標権が保護されるため、この例のように関連性のない区分で商標が使用されても商標権侵害が成立するようになります。

周知商標は商標法または不正競争防止法において権利が保護されますが、著名商標に成長するとさらに防護標章登録によって幅広く権利を保護することが可能となる点は、両者の大きな相違点となっています。