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ソフトウェアも『発明』?
特許法において発明とは、『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの』とされています。
より具体的には、物や方法、製造方法の発明について、特許による保護を受けることができます。
では、いわゆる『アプリ』のようなソフトウェア、つまり、コンピュータプログラムはどうでしょう?
旧来、コンピュータプログラムは、上述した物や方法、製造方法のいずれにも当てはまるものではないとして、特許法における発明として認められませんでした。
しかし、IT技術が急速に加速している昨今では、革新的なプログラムなどは明らかに保護すべきものになっています。
そこで、2002年、特許法においてはコンピュータプログラムを『物』として扱うという改正がおこなわれました。
これにより、アプリなどのソフトウェアを、『物』の発明として保護することが可能になりました。
また、ソフトウェアに関する権利を保護するための方法として、
それ自体をプログラムとして保護する他にも、様々な方法があります。
例えば、アプリがインストールされたスマートフォン等を『物』の発明として、
アプリがサーバとの通信を伴うものであれば、サーバまでを含めたシステムという『物』の発明として、
サーバ上での処理に特徴があるウェブアプリケーションであれば、そのような処理を行うサーバという『物』の発明や、
サーバ上での処理に用いるプログラムという『物』の発明として、
あるいは、アプリによる処理の手順を『方法』の発明として、
といったように、様々な形での権利化が考えられます。
実際に特許出願を行う場合には、ひとつのソフトウェアやシステムを、
このような様々な『発明』として多角的に表現することで、より多様な形での保護を目指すことが多いです。
『ビジネスモデル特許』は取得できる?
『ビジネスモデル特許』という言葉を耳にされたことがある方も多いかと思います。
ビジネスモデルとはすなわち、ビジネスを行う『方法』であるといえます。
では、すべてのビジネスモデルは、『方法』の発明として保護を受けることができるでしょうか?
答えは否です。
ビジネスを行う『方法』それ自体は、取引などを行う上での単なるルールであり、
冒頭で述べた『自然法則を利用した技術的思想』ではなく、特許法における『発明』には該当しません。
では、特許によってビジネスモデルを保護することが全くできないのかといえば、そうではありません。
『ビジネスモデル特許』と呼ばれるものの多くは、ソフトウェア関連の発明として出願されています。
IT技術が発展し、種々の業界に広く浸透している現在では、多くのビジネスモデルにソフトウェアが関与しています。
そこで、ビジネスモデルを他人に模倣されないために、
そのビジネスモデルを実施するためのシステムやプログラムといった『物』の発明や、
それによるコンピュータ処理の『方法』といった形で特許が出願されているのです。
ソフトウェアの特許出願は難しい?
ソフトウェア関連の特許出願は、他の技術分野における特許出願と比較すると独特な難しさがあるといえます。
例えば、上述したようなビジネスモデルに関する特許を出願する場合であれば、
どのようにしてそのビジネスモデルを保護するか、という点をよく考え、かつ、
それを特許法でいうところの『発明』に含まれるように表現する必要があります。
また、多くのソフトウェアが、実行形式ファイルの状態での販売や、ウェブアプリケーションによるサービス
としての提供など、内部での具体的な処理が購入者や利用者には見えない場合が多いです。
しかし、特許出願を行い、権利を取得するためには、その技術分野において通常の知識を持つ人が実施できる程度に、
発明の内容を開示する必要があります。
そのため、どの部分を『発明』として特許出願するのか、
どの部分を自社の『ノウハウ』として秘匿するのか、
といった点についても、よく検討する必要があるといえます。