知的財産の管理において非常に重要なのが「有効期限」です。
知的財産には有効期限があるため、永久に権利を独占できるわけではありません。
特に特許権の有効期限については、いつから起算するのか、有効な期間はどれだけあるのかをしっかりと把握しておく必要があります。
特許権の有効期限について解説していきましょう。
知らなかったでは済まない!特許の『存続期間』
最近、100円均一のショップなどでクラシックミュージックのCDやアニメのDVDが販売されていることに気が付いた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
これ、実は著作権の有効期限が切れた、つまり作者など特定の人物や法人の権利物ではなく「広くみんなのもの」になって安価に販売することができるようになったからなのです。
これと同じように、特許にも有効期限があります。
特許の場合、これを『存続期間』と呼び、存続期間は原則20年間と定められています。
ただし、特許の存続期間の考え方は、少し独特です。
特許の存続期間は「特許出願の日から20年間」です。
少し分かりにくいので具体例を用いて説明しましょう。
例えば2016年4月1日に特許庁に特許出願をしたとします。
そして、審査を経てちょうど3年後の2019年4月1日に設定登録が完了したとしましょう。
一般的な考え方からすると、設定登録が完了した日の2019年4月1日から有効期限がスタートするように思われます。
しかし、特許に関しては「出願の日」、つまり2016年4月1日から存続期間がスタートすることになります。
つまり、このケースでは2016年4月1日から2036年4月1日の20年間が存続期間となります。設定登録後から特許権の行使が可能となるため、この例では2019年4月1日からの17年間しか特許権を行使できません。
この制度を不思議に感じる方は多いと思います。
ここには特許法の理念が関係します。
特許法の目的は「産業の発達」であり、権利者が必要以上に長い期間発明を独占することを産業発達の阻害ととらえているからです。
人々の生活を豊かにする発明は、少しでも早く、誰にでも広く利用できるものになって欲しいものでしょう。
特許の存続期間制度は、特許権者にとっては少し不合理ですが、「産業の発達に寄与する」という特許法の理念に基づいたものなのです。
例外もある?特許権の延長
基本的には「出願の日から20年間」の特許の存続期間。
ただし、医薬品や農薬などの、販売に国からの認可が必要となる技術には例外的に最大5年間の存続期間の延長が認められています。
特に、医薬品分野は、臨床試験等を含む製品開発、承認を受けるのに必要な時間・投資額が莫大になることが多々あり、また特許権の存続期間満了後には間髪おかずにジェネリック医薬品が上市される特殊な分野です。
そのため、医薬品分野では、延長制度を利用することが非常に重要です。
自動で20年間の保護が受けられるわけではない
特許権の存続期間が20年間だといわれると、出願の日から起算して20年間は自動的に権利が保護されるものと考えるでしょう。
ところが、特許権は自動的に維持されるわけではありません。
実は、特許権の維持には「年金」と呼ばれる特許料の支払いが必要です。
初回の登録時に3年分の特許料を支払うため、4年目以降は毎年の年金を支払わないと、たとえ存続期間内であっても特許権が無効となってしまいます。
しかも、運転免許の更新のように「そろそろ特許権が無効になります」という通知が送られてくるわけではないので、存続期間の管理は権利者においておこなう必要があります。
年金は数年分のまとめ払いが可能なので、先数年は間違いなく権利を維持する予定である、資力に余裕があるといった場合はまとめ払いを検討しましょう。
存続期間の考え方がわからない、年金支払いなどの維持管理を任せたいという方は、信頼できる弁理士が所属している特許事務所に相談すると良いでしょう。