特許と実用新案はよく似ている制度のため、違いがいまいちわからないといった方も多いのではないでしょうか。

大まかに説明すると、特許権は、審査を経て登録されるので、信頼性の高い権利となります(メリット)が、時間と費用がかかります(デメリット)。

対して、実用新案権は、実体的な審査がないため一般的に信頼性が低いです(デメリット)が、早期かつ安価に取得することができます(メリット)。

今回はそんな特許と実用新案の違いについてご紹介します。

 

特許と実用新案の違い

大きく分けると4つあります。
まず、特許と実用新案は保護対象が異なります。

具体的には、特許のほうが実用新案より保護対象の範囲が広いのです。

実用新案は物の形状、構造や組み合わせしか保護対象になりません。

しかし、特許は物(コンピュータープログラムを含む)と方法の両方を保護対象とします。

ここでの方法というのは、物質の測定方法や物の製造方法などのことです。

 

次に、権利の存続期間が異なります。

特許は、出願から20年、実用新案は、出願から10年です。

 

続いて、取得手続きにおける違いです。

実用新案は出願書類の『形式だけ』の審査となります。つまり、出願内容を確認する実体的な審査がないため、特許と比べると非常に簡単に権利が取得できます。

また、実用新案には実体的な審査がないため、実用新案権は取得までの期間が数ヶ月ととても短いです。

一方、特許権の取得には出願内容を確認する実体的な審査が必要となります。

そのため、特許権の取得までには時間がかかります。

 

そして、最も気を付けなければならないのが権利行使における違いです。

実用新案は、出願内容を確認する実体的な審査が無いため、権利が取得できたとしてもその権利が本当に有効であるのかは不明です。

そのため、権利行使をする場合には、特許庁に対して「実用新案技術評価」の請求を行い、その評価結果が記載された「実用新案技術評価書」という書類を取得しなければなりません。特許庁による技術評価は特許における実体的な審査に相当します。

もし、この「実用新案技術評価書」の結果・評価がよくない場合には、権利行使をしてもそれが認められる可能性は低いため、他人から真似されても太刀打ちできず、逆に模倣してきた側から訴えられる可能性もあります。

この意味で、実用新案は、不安定な権利であるといわれています。

 

一方、特許は、特許庁の厳しい審査を受けて権利が成立しているので、一定の確度をもって権利行使ができます。

 

特許と実用新案の条件

特許出願、実用新案出願の際には、このような違いをきちんと把握する必要があります。

特許権、実用新案権の違いを理解し、自分の権利取得する目的をしっかりと考えた上で、どちらの権利を取得するべきか考えると良いでしょう。

 

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